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「単純X線検査は静止画撮影」の
常識を打ち破り、
医療の新時代に貢献する。
肺が動く様子を単純X線撮影(レントゲン)で見たことがある医師はいない。一般のレントゲン撮影は静止画だ。コニカミノルタは単純X線撮影装置で動画撮影が可能なデジタルX線動画撮影システムを開発し、世界で初めて肺やその血管が動く様子を可視化することに成功。その構成要素の一つであるX線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」は、撮影されたX線動画像をコニカミノルタ独自の画像処理技術で解析・処理し、これまでにない新たな診断情報を提供する。
ヘルスケア事業本部
IoTサービスPF開発統括部
簡易・低価格・低リスクで
“動きを見える化”する。
もし単純X線撮影(レントゲン)装置で動画撮影ができれば、静止画ではわからなかった生体情報が見えてくるかもしれない。実現すれば、簡易・低価格・低リスクでの診断が可能になり、疾患の早期発見・早期治療や患者への負担軽減につながるはず。プロジェクトはそんなテーマに挑んだ。これを実現したデジタルX線動画撮影システムは、X線動画解析ワークステーション「KINOSIS(キノシス)」と、可搬型デジタルX線撮影装置「AeroDR fine motion」で構成され、従来の単純X線撮影と同様の一般X線撮影装置で利用できる。パルスX線を1秒間に約15回連続照射し、コマ撮りした画像を連続表示することで動画を作り出す。コニカミノルタは動画から肺の動きを見える化する技術を開発し、肺胞や肺血管などの肺組織のわずかな変化から生体情報を表現することに成功。2018年に販売され、多くの臨床現場への導入が進んでいる。
どのように見えるのか、
誰も知らないものが見えた。
医療現場の課題を掘り起こす。
現在、このプロジェクトは、臨床研究と技術開発を担当するメンバーにて進められている。
2015年に臨床研究の一員としてプロジェクトに参加した松田は、当初は戸惑うことばかりだったと語る。臨床研究の役割の一つに、医療現場の課題を掘り起こすことがある。X線動画解析の想定ユーザーは、呼吸器や循環器、整形などさまざまな専門性を持つ。初めのうちは、知識・経験が及ばず、医師との会話さえままならなかった。繰り返し医師と対話し、臨床的知見を収集することで、徐々にX線動画解析の有用性を見出していった。「当社には独自に培ってきた画像処理の技術があります。医療現場の潜在的な課題を探り、技術で解決に導くのが私たちの役割です」。
“見えないものを見たい”という願望。
画像処理・画像認識の技術者としてプロジェクトに関わってきた嶋村は、AI技術部のリーダーを務める。「見えないものを見たいという願望を、多くの医師が主張していました。それを実現するまでは試行錯誤の連続でした」。肺血流を可視化するというテーマは、医師との対話の中で生まれた。通常、肺血流を評価するためにはシンチグラフィーや造影CTを用いた画像診断を行う。しかし、検査には高額な装置が必要であったり、患者の体内に造影剤などの薬剤を投与する必要があったりと、運用上の課題があった。単純X線撮影は画像診断の中で最も普及している検査だ。単純X線撮影で手軽に同等の診断情報が得られれば、これまでの診療が大きく変わる期待があった。
世界初の技術を集約し、
新たな価値を創出。
“発明だらけ”で特許庁から表彰。
デジタルX線動画撮影システムには、世界初の技術が数多く盛り込まれている。しかし、プロジェクト開始当時は苦労があった。「しばらくは勘所が分からず四苦八苦しましたが、だんだん見えない信号波形の扱い方や、見えない生体にどう迫るべきかがわかってきました。開発したアルゴリズムで、肺血流シンチグラフィーと非常によく似た映像を作り出せた時は衝撃でした。多くの医師から称賛の言葉をいただき、これで技術者として足跡を残せると思い嬉しかったのを覚えています」(嶋村)。このシステムに関する特許出願数は数百件に上る。まさに”発明だらけ”だ。世界に先駆けた日本発の技術として特許庁から評価を受け、コニカミノルタは「平成30年度 知財功労賞 特許庁長官表彰」を受賞している。
手術に伴うリスク低減にも貢献。
X線動画解析の価値は、肺血流だけに留まらない。呼吸器外科における例を挙げる。近年、肺癌を対象とした肺切除手術では、胸腔鏡下手術という手法が主流になっている。これは胸に小さな穴を開け、そこから胸腔鏡と呼ばれる細長いビデオカメラのような装置と手術道具を挿入して行う手術だ。ただし手術の最中に肺の胸膜癒着が見つかるケースがある。胸膜癒着があると手術の難易度が上がり、出血による合併症のリスクも高まる。「手術前に胸膜癒着の有無を確認する方法はないかと、医師から相談を受けました。 X線動画解析なら役に立てると直感しました」。松田と嶋村は肺内の動きを可視化する技術の開発に着手、その結果、動画から癒着の有無を推定できるコンテンツが「KINOSIS」に追加されることになる。「このプロジェクトは、医師を始めとした医療従事者との協力が不可欠です。医療と社会に貢献できる仕事は、とてもやりがいがあります」(松田)。
より多機能・高精度な診断支援装置に
育てていく。
コニカミノルタは先端医療のAI技術開発を幅広く進めている。2019年に参画した渡辺は、医師の“胸部の肺野を解析したい”という要望に応え、肺野形状を認識するDeep Learning技術開発を担当、先輩のアドバイスを受けながら実現した。体型や疾患など様々な患者に対応した画像認識を行うには、AI技術が適切だったと言う。渡辺は語る。「動画は静止画と比べて情報量がはるかに多く、解析の難易度が高いが、その際にAIは非常に強力なツールになる。コニカミノルタには、これまで培ってきたお客様との信頼関係と、独自の画像処理技術がある。そこにAI技術の進化をさらに組み合わせることで、世の中に大きな価値を提案できる。お客様のワークフローに最良の情報を提供することが、僕たち技術者の役割だと思っています。」
※「X線動画解析ワークステーションKINOSIS」及び「KINOSIS」は「画像診断ワークステーション コニカミノルタ DI-X1」(製造販売認証番号:230ABBZX00092000)の呼称です。
※「AeroDR fine motion」は「デジタルラジオグラフィー SKR 3000(製造販売認証番号228ABBZX00115000)」の呼称です。
※KINOSIS 及びAeroDRは、日本及びその他の国におけるコニカミノルタ株式会社の登録商標または商標です。