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24時間365日、
見えないガスを監視。
プラント現場の安全を守る。
天然ガスは石炭や石油に比べて燃焼したときのCO2発生量が少ないため、地球温暖化抑制につながり、環境にやさしい次世代エネルギーとして注目されている。ただ可燃性であるため火災・爆発事故を未然に防ぐことが重要だ。コニカミノルタの『ガス監視ソリューション』は、ガス漏洩を見える化することで安全操業に貢献している。
画像IoTソリューション事業部
レンズ設計技術と画像処理技術を
もとに
新規事業を開拓する。
コニカミノルタには、レンズ設計技術と画像処理技術をコア技術として培ってきた歴史がある。2007年にフォト・カメラ事業は終了したものの、その技術を受け継ぎ、新たなビジネスを創出するためのチャレンジは、今もなお脈々と続いている。たとえばカメラ・光学技術と、その延長線上にある赤外線技術を使えば、目に見えないさまざまなものが可視化できる。それらを活用してコニカミノルタの強みを活かしたソリューションが提供できないか。そんな発想から新規事業を立ち上げるためのさまざまな研究が行われてきた。なかでも注目したのが、社会課題を解決するための事業。高度経済期に建設され、老朽化が進んでいる高速道路もそのひとつだ。メンテナンスに赤外線技術を使えば、目に見えない構造物の状態が正しく把握できるはず。あるいは石油化学コンビナートもそうだ。ガス漏れや爆発事故が実際に起きている。そうした多くの社会課題を検討した結果、ガス分野に絞って研究を深めようという方向性が定まった。
ソリューション開発部
ガス事業テーマリーダー
カメラ開発の技術者から
プロジェクトのリーダーに。
見えない危険を見える化する。
2015年、鈴木がプロジェクトのリーダーになった。鈴木は1997年、旧コニカに入社。カメラ好きで、カメラづくりに携わりたいというのが入社動機。入社後はカメラ商品開発部に配属され、念願のカメラ開発を手がけた。コニカミノルタがカメラ事業を終了した後も、カメラ・映像関係の新規事業に関わっている。「ガスの分野でなら新規事業の実現性が高い。マーケティング部門がそう判断して、いよいよ開発メンバーが召集されることになり、私もリーダーとして呼ばれました。目に見えないガスを可視化することで、見えない危険を見える化し、安全で地球環境にやさしい社会基盤の構築に貢献するという目標に、大きなやりがいを感じたのを覚えています」。開発部門のスタッフは5~6名。マーケティングを合わせても10名足らずのメンバーでのスタートだった。
新規事業には、夢と困難がある。
「市場がありそうだとマーケティングのチームが判断してプロジェクトが始まったわけですが、じゃあ具体的にはどんな困りごとがあるのか。それに対してどんなスペックの製品があれば満足してもらえるのか。一からヒアリングをして、ゼロから構想を練って、試行錯誤の連続でしたから、製品化までには2年ほどかかりました」。新規事業には夢がある。まだ世の中にないもの、世の中に役立つものをつくり上げたいという想いがモチベーションになる。だが当然、開発を進めるにはコストが必要。そのためには会社に提案し投資を得る必要がある。「私は技術者上がりだし、もともとは人の前で話す、プレゼンテーションで相手を納得させるようなことは得意じゃないんです。でもリーダーとしてそれをやらないといけない。思い切って信念と覚悟で乗り切りました」。
グローバルネットワークを活かして
海外市場への進出を狙う。
アメリカのパリ協定離脱で
想定外の事態に。
2019年、鈴木はアメリカのオハイオ州にいた。アメリカは2000年代後半からシェールガス革命に沸いた。シェールガスはCO2の排出量は少ないが、採取時に温室効果ガスであるメタンを発生する。そのためパリ協定で排出量の管理が義務づけられ、オバマ大統領も批准していた。排出量管理のために『ガス監視ソリューション』の需要が見込めると、鈴木たちは想定していた。ときは大統領選のさなか。鈴木が立ち会った展示会場に、2期目の就任を目指すドナルド・トランプ大統領が訪れて演説した。「石油・石炭産業からの支持を得たいトランプ氏は環境政策をさらに後退させようとしている。そうなると私たちのビジネスチャンスが一気に萎んでしまう。そんな危機感を抱かせる演説でした」。やがてトランプ大統領の判断でアメリカはパリ協定から脱退してしまう。海外進出の構想は行き詰った。
グローバル市場への再挑戦。
その後、トランプ氏を破って勝利したバイデン大統領のアメリカは、2021年2月、パリ協定に復帰。11月のCOP26では、米中が気候変動対策で協力を強化するという共同宣言を発表した。「アメリカの新たな取り組みに期待していますし、世界的に見ても悪くない方向に向かってきたと思っています。これからどうやってビジネスチャンスをつかんでいくかが課題です」。9月にはドバイで『ガス監視ソリューション』を紹介した。中東地域では初めてのことだ。「ドバイにある販売会社の社長が、突然もちかけてくれた話でした。こちらからアプローチしたわけではないんですが、中東でも市場は見込めると勧めてくれたんです。ちょっと感動しましたね」。コニカミノルタには、これまでに築き上げたグローバルネットワークがある。それが海外展開をするうえで、大きな支えになってくれるに違いないと鈴木は考えている。
不確実性の高い時代に、
柔軟に社会的ニーズを見つける。
「実は赤外線でガスを可視化する技術そのものは、別に新しいものではないんです。それだけなら他にも競合はいる。私たちが違うのは、ガスを可視化するだけではなく、それを監視システムにして、さらにクラウドに上げ、世界中のどこからでも状態が監視できる、そういうソリューションに仕立てたことなんです」。そのためユーザーには、人に頼らず常に異常発生の監視ができる、熟練者でなくても早急で適切な保全が可能、異常発生を未然に予防できるといった分かりやすく使い勝手のいいメリットが提供できるわけだ。この新規事業は、まだスタートしたばかり。どうやってビジネスを広げていくか、大きくしていくか、それが今の、そしてこれからの課題だ。「エネルギー転換は必ず起き、再生エネルギーにシフトしていきます。そのとき何ができるのか。そのための研究も始めています」。不可実性の高い状況のなか、ビジネスの構想も柔軟に広がっている。