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自治体業務の変革を支援。
目指すは、地域間格差のない社会。
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高齢者人口がピークとなり労働力不足が深刻化する「2040年問題」。民間企業と同じく、自治体も人材不足の課題に直面している。自治体の業務改善に向け、政府は「自治体情報システムの標準化・共通化」を打ち出した。コニカミノルタが開発した「自治体DX支援プラットフォーム」は、自治体業務のデジタル化をサポートするツールとして全国的に注目されている。
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デジタルワークプレイス事業本部
自治体の膨大な業務。
その量も蓄積されたノウハウも
“見えない”という現実。
自治体業務の多くには、作業マニュアルが存在しない。そのため仕事が属人化しやすく、担当者が不在だと仕事がまわらないといった事態が起きる。また書類文化・ハンコ文化が根強く、そのため職場にいないと仕事ができないからテレワーク化も難しい。そもそも各部署での業務量が可視化されておらず、職員でなければできない仕事と、そうでない仕事の区分さえ明確ではない。コニカミノルタがそんな自治体業務の効率化に関わり始めた。まずは札幌市と提携し、現在の業務を調査し、改善の糸口を探ろうという起案からスタートした。コニカミノルタは自治体が行う業務に対してのノウハウが全くないため、スタート当初は無償で業務を勉強させてもらうところから始まった。塚野がそのプロジェクトを担うチームに異動したのは2021年1月。そのときから“ソリューション開発リーダー”という肩書が与えられていた。
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最初の仕事は、
進んでいた開発を
白紙に戻すことからだった。
ユーザー視点に立って
すべてを見直した。
異動した1ヶ月後、塚野はそれまで進んでいた開発作業を見直し、ユーザー視点に立てていないことに懸念を感じた。ユーザーである自治体職員にリンクしていない。機能が多過ぎて必要なものと必要でないものが混在している。もう一度ユーザー視点に立ってすべてを見直すべきではないか。プロジェクトを白紙に戻し「ゼロから作り直したい」と部長に提言した。すでに関係部署は動き出している。いくつか投資もしていた。当然「本当に白紙に戻していいのか」など反論が予想される。「説得するためにはどういうストーリーが必要か。それを部長と相談してつくり上げ、説明にまわりました。大変でしたが、ユーザーを無視して続けることはできないと、最後にはみんな納得してくれました」。再スタートを切ったはいいが、自治体の特性上翌年の予算取りは早い。残された時間はたった4か月。短期決戦が始まった。
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4カ月という短期間で
スピードリリースを達成。
まず信頼できる外部ベンダーを6社集めて各社の役割を明確にした。その後の作業工程は、塚野がすべてチェックする。「今回は短期間で間違いなく作業を進めたかったので、複数の協力会社に依頼をし、常にコミュニケーションを取り、すべてのプロセスをチェックしました」と塚野は話す。一人が全工程をチェックするためには幅広い知識が必要になる。自分が理解し、それをチームのメンバーにも理解させないと仕事が進まない。塚野はひたすら参考文献を読み漁り、社内外の先輩、同僚、友人にアドバイスを求めて知識を吸収した。「機能を絞り込むためにメンバーとかなり議論をしました。この機能は絶対に役立つ、というものだけを絞り込む議論を通じてメンバーのマインドが揃い、何を提供したいかが明確になりました」。その結果、困難と思われた4か月でのリリースを成功させることができた。
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情報を共有し、
業務改善に取り組む
プラットフォームの構築。
全体調査で把握できていなかった量を
“視える化”する。
『自治体DX支援プラットフォーム』は、DX可視化サービス・DX業務分析サービス・DX最適化サービス・DX標準化サービスの4つのプロセスで成り立っている。まずアンケートやヒアリングを通じて業務量全体調査を行い、業務量を「視える化」する。これを分析することよって職員の負担が大きい業務や改善可能な業務が把握できるようになる。それをもとに業務手順書を作成して作業を最適化していく。「自治体が一般企業と違うのは、法令によって業務の公開が原則になっているということ。そのため各自治体が作成した業務手順書はプラットフォームで公開することができます。他の自治体はそれを自由に閲覧することができるわけです。各自治体が情報を共有し、優れた事例を参考にしながら自分たちの業務改善を行えるのが、このサービスの大きな特長です」。
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業務手順書という共通の
“ものさし”を創り出す。
コニカミノルタではすでに110以上の自治体で業務改善のサポートを実施しており、各自治体が作成した業務手順書が随時プラットフォームで公開されている。ただメリットは分かっていても、小さな自治体だと費用対効果が合わずに導入をためらうことはないのだろうか。「小さな自治体の場合、近隣の自治体と共同で導入する、あるいは大きな自治体に相乗りするといったことも可能です。ただそのとき不可欠なのが業務の標準化・共通化なんです」。そのため業務手順書は共通のフォーマット、共通の用語で作成される仕組みになっている。「業務手順書という共通の“ものさし”を使うことで、他の自治体との比較が容易になり、複数の自治体が協力して業務改善に取り組むことが可能になります。クラウドサービスによって場所を選ばず業務が遂行できる環境も実現できました」。
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自治体自身がサービスを育てていく
サポート役でありたい。
自治体間で共有するプラットフォームのため、参加する自治体が増えるほどこのサービスの価値は高まる。ただそれは使い方次第だ。「リリースしたら終わりではなく、どう使いこなすかをアドバイスしながら、現場の声を反映して改善を続けていくことがとても大切です。その意味で、まだまだ成長してくサービスなんです」。たとえば業務手順書の公開件数が増えれば増えるほど、どれを参考にすればいいか迷いが生まれる。自治体によって選択基準が違うと、標準化・共通化という目的から離れてしまう。「たとえば閲覧した自治体の職員が、参考になった事例に対して“いいね”できる機能をつくろうとしているところです。どの事例が優れているのかを、私たちだけではなく自治体のみなさんと共に考えていきたいと思っています」。コニカミノルタが提供するサービスというより、自治体が共有するプラットフォームがある、それを自治体自身が育てていくという状態にしたい。塚野が一貫してめざしているのは、そういうサービスの世界観なのだ。