知財活動を支える知財DX

当社は、知財DXを通じて一人当たりの生産性が高い組織への変革に取り組んでいます。ここでは、知財活動を支えるDXの事例をご紹介します。

①先行技術調査の効率化

特許出願において、先行技術調査は不可欠ですが、調査の機会が少ない開発者にとってはスキルの維持が難しく、その結果、先行技術の抽出に漏れが生じ、先行技術の存在を理由に特許出願が拒絶されるケースがあります。この課題を解決するため、スキルの差に関係なく文章入力だけで先行技術を検索できるツールを開発し、従来の業務フローと比較して対し約85%もの時間短縮を実現しました。

②自社技術・人財探索の効率化

これまで社内では、特定の技術に関する社内有識者を見つけ出すのに時間を要していました。知財DXの一環として開発した技術資産可視化ツールは、社内の技術資産を見える化し、探索可能にするだけでなく、それに関連する社内の技術人財も探索できるようになりました。
これにより、特定技術の社内有識者へ効率的にアクセスできるようになっただけでなく、新規事業の創出に向けたチームビルディングを行う際にも、必要な技術資産と人的資産を容易に探索して結集できるようになりました。その結果、技術と人財を融合活用した新たな事業の立ち上げが促進され、新たな特許資産の創出にもつながることを期待しています。

③AI活用による外国特許出願プロセスの改革

当社は海外売上比が高く、事業戦略と連動させた外国特許の出願を行っております。この外国特許出願では、出願明細書を現地の言語に翻訳することが不可欠であり、外国出願における明細書作成の工数の大部分を占めていました。特に、特許翻訳では慎重な用語選択が求められるため、作業者による品質や必要な作業時間のばらつきが課題でした。当社はこの課題解決に取り組み、AIによる校正アシスト機能を開発しました。本機能により、翻訳および最終確認工程のそれぞれにおいて大幅な工数削減の見通しが立ち、同工程での作業者の負担を軽減するとともに、より高度な品質チェックや専門性の高い翻訳作業に注力できるよう、本機能導入による環境整備を進めました。今後も継続的な改善を進め、AI技術のさらなる活用を図り、工数削減の最大化を推進していく予定です。

④生成AI活用によるIPランドスケープの生産性向上

当社では従前より、知的財産部所属のデータアナリストがIPランドスケープ(知財を含む技術情報、市場情報等を組み合わせた多面的な分析を行い、戦略提案等の各種アウトプットを提供すること)を実施しています。社内でその有用性の認知度が高まるにつれ依頼が増加し、安定して高品質なアウトプットを提供することが難しくなってきました。一方で、数多くの案件に対応する中で、依頼内容に関係なく必ず行う作業(情報収集・分析)を、すべての依頼に適用可能な共通プロセスとして構築できる可能性があると考えました。そこで生成AIを活用し、共通プロセスに基づいて、多種多様な情報ソースから必要な情報を自動で収集・分析するツールの開発を検討しています。これにより情報収集等の工数の大幅な削減を実現させ、アナリストが高度な情報処理に集中できるよう、環境整備に取り組んでいます。

生成AI活用によるIPランドスケープの生産性向上