リスクマネジメント
基本的な考え方
グループ横断的なリスクマネジメント体制を整えています。
経済のグローバル化や社会の変化とともに、企業を取り巻くリスクは多様化しています。
コニカミノルタは、事業にともなうさまざまなリスクを明確にしてその影響を最小限に抑えるために、グループ横断的な体制を整えています。また、自然災害などの不測の事態が発生した際に備えて、事業を継続、あるいは早期復旧するための事業継続管理にも取り組んでいます。
リスクマネジメント体制
コニカミノルタは、コニカミノルタグループの事業活動に関する諸種のリスク管理を所管するリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント委員会規則に従い、取締役会で任命された執行役及び執行役員が以下のリスク管理体制の構築と運用にあたっております。
コニカミノルタグループの事業活動に関する事業リスク及びオペレーショナルリスクについては、執行役及び執行役員の職務分掌に基づき各執行役及び執行役員が、それぞれの担当職務ごとに管理しており、リスクマネジメント委員会はそれを支援しております。また、リスクマネジメント委員会は、グループ経営上重要なリスクに関する抽出・評価・見直しの実施、対応策の策定、管理状況の確認を定期的に行っております。
リスクマネジメント委員会の協議内容は定期的に監査委員会に報告しており、取締役会への報告は必要に応じて実施し、取締役会を構成するメンバーには月次の報告が行われております。
なお、コニカミノルタでは、リスクが顕在化し企業価値に大きな影響を及ぼす状況を「危機(クライシス)」と定義し、クライシス発生時には上長経由で担当役員と危機管理担当役員へ報告し、さらに担当役員と危機管理担当役員は、代表執行役へ報告を行います。様々なリスクによって発生するクライシスに対し、コニカミノルタは迅速・適切に対応するためにクライシス発生時の報告ルールを設け、執行役及び執行役員やコニカミノルタ子会社役員等に周知しております。その報告ルールに沿って、世界各地で発生した災害・事故、その他のクライシスに関する情報を危機管理担当役員が集中管理しております。
従業員に向けて、リスクマネジメント教育の実施に加え、リスクマネジメントの教育資料をイントラネットに掲載し、いつでも閲覧できるようにしております。
また、従業員が自発的に行ったリスク対策などの業務プロセスの改善を評価し、優れた取り組みには褒賞金を支払う制度があります。
リスクマネジメントプロセス
コニカミノルタは、リスクマネジメント委員会を定期的(年2回)及び必要に応じて臨時に開催しております。この委員会では、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応策を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。当期は、同委員会を2回開催し、主に米中対立やウクライナ情勢及びイスラエル・パレスチナ情勢に起因するグローバルサプライチェーンの混乱及び半導体を中心とした米中ハイテク摩擦に対し、事業への影響度の高い国・地域に適用される制裁や新たな法規制等の定期的なモニタリングを実施しました。
なお、リスクマネジメントプロセスにおける活動状況は、リスクマネジメント委員会より代表執行役や経営監査室長へ月次の報告が行われ、経営監査室は内部監査を定期的に実施しております。
事業等のリスク
コニカミノルタグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクを以下に記載しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられるほかのリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。
また、コニカミノルタは、リスクを「組織の収益や損失に影響を与える不確実性」と捉えております。リスクを単にマイナスの側面からだけではなく、「機会」としてのプラスの側面からも捉えたうえで、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置付けております。
記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、コニカミノルタグループが判断したものであります。
最初に、各リスク項目をリスクマップ上にプロットした図を掲載いたします。
なお、「発生可能性」については、3年以内に発生する頻度・確率より評価し、「影響度」については、発生した際に営業利益へ与える影響より評価しております。
「発生可能性」と「影響度」について、前連結会計年度(以下「前期」)より評価が変更されているリスクは、評価欄に矢印を用い、前期と当期の評価を記載しております。
また、リスクアペタイトは各執行役及び執行役員(リスクオーナー)の職務分掌下において運用が行われております。
分類 | リスク項目 | 発生可能性 | 発生する可能性のある時期 | 影響度 |
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経済 環境 |
①-1)経済動向・市場環境 | 高 | 1年以内 | 大 |
①-2)為替レートの変動 | 高 | 1年以内 | 中 | |
事業 活動 |
②-1)デジタルワークプレイス事業 プリント環境の変化に関連するリスク |
高 | 1年以内 | 大 |
②-2)各国・各地域の規制 | 高 | 1年以内 | 中 | |
②-3)次世代技術変化 | 中 | 3年以内 | 中 | |
②-4)新製品への移行 | 中 | 3年以内 | 大 | |
②-5)他社との協業、企業買収等について | 中 | 特定時期なし | 中 | |
②-6)生産・調達等 | 中 | 1年以内 | 中 | |
②-7)グローバルサプライチェーン | 中 → 高 | 1年以内 | 大 | |
②-8)製造物・品質責任 | 低 | 特定時期なし | 中 | |
その他 | ③-1)人権 | 中 | 特定時期なし | 中 |
③-2)大地震・自然災害・感染症等 | 中 | 特定時期なし | 大 | |
③-3)気候変動・環境規制 | 中 | 特定時期なし | 中 | |
③-4)知的財産権 | 低 | 特定時期なし | 小 | |
③-5)人財確保 | 中 | 3年以内 | 大 | |
③-6)情報セキュリティ | 高 | 特定時期なし | 大 |
各リスクの詳細については下記リンクからご確認ください。
リスク情報
エマージングリスク
リスク名 | IT人財の確保 |
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リスクの内容・説明 | IT人財、特に先端技術人財であるAIのスペシャリスト等のIT人財の獲得は獲得上のコンペティターが多く、また、その業界も日本に限らずグローバルに渡るため、報酬等の一要素だけで惹きつけることは困難であり、会社の魅力や働くことの付加価値への訴求に対する重要性が増しております。 |
会社・事業への影響 | コニカミノルタは材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術とIoT・AIに代表されるデジタル技術というユニークで幅広い技術ポートフォリオを所有しております。技術戦略やコア技術資産を外部に積極的に発信し、環境デジタルプラットフォームや画像IoTを用いて現場のDXを加速させる「FORXAI(フォーサイ)」を介して大学、研究機関、スタートアップ等の幅広いパートナーとエコシステムの構築を試みております。IT人財を獲得できない場合、新規事業を創出できず、将来的な事業の成長に大きな影響を及ぼす懸念があります。 |
対応策 | 人財獲得: IT技術に関する複数の長期インターンシップ(社内研究開発テーマを使用しジョブマッチング向上、コニカミノルタの魅力を体感)、海外の大学へのリクルート活動およびベトナム大手IT企業との合弁会社を設立するなどの取り組みを進めております。 人財育成: 社内認定制度設立、教育プログラム構築、ITを含む専門人財用管理職制度の設立などの取り組みを進めております。 |
リスク名 | 地政学リスクに伴うサプライチェーンへの影響 |
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リスクの内容・説明 | 今後の世界経済は、ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢の悪化、米中対立の激化等の地政学リスクへの警戒感によってサプライチェーンに大きな影響を及ぼす懸念があります。 |
会社・事業への影響 | コニカミノルタの主力事業であるデジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業及びインダストリー事業では、コスト競争力強化と市場への迅速な製品供給のために海外での生産活動を継続しております。特に中国やASEANにおける生産が多く、その拠点からグローバルに供給を行っております。地政学リスクによってサプライチェーンが分断された場合には販売拠点への供給が滞り、コニカミノルタグループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
対応策 | 中国・ASEANの港湾課題については、新規フォワーディング会社のサービス利用や通常輸出港以外の代替港利用によりフレキシビリティを確保し、課題発生時には、生産拠点からの貨物の優先付けを行うことで、出港地側での供給リスク回避・低減に努めております。 海上輸送については、従来取引がある主要フォワーダーとのコミュニケーション・情報連携を強化し、コンテナ船のスペースを安定的、かつ柔軟に確保しつつ、コンテナ輸送単価の上昇幅を最小限に留める交渉・調整に努めております。特に、欧州航路においては、イスラエル・パレスチナ情勢に注視しながら、喜望峰迂回ルートによる延伸日数影響を踏まえた適切な供給調整を図り、欧州販売拠点での販売に与える影響や、物流コスト増加による影響を最小化しております。 |
クライシスマネジメント体制の構築
事業および社会に及ぼす影響の最小化を図る体制を構築しています。
さまざまなリスクによって発生するクライシスに対して、迅速かつ適切な対応と情報公開を行い、事業および社会に及ぼす影響の最小化を図る体制を構築しています。取締役会で任命された危機管理担当役員を委員長とする「危機管理委員会」を設置し、クライシス発生時の対応策や行動手順を審議、策定しています。
また、クライシス発生時に、危機管理担当役員に加えて、代表執行役社長が事態の把握と意思決定を迅速に行うため、緊急連絡体制を整備するとともに、重大案件については代表執行役社長が陣頭指揮をとる体制を構築しています。
クライシスの要因 | クライシスの内容 | |
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1 | 商品の品質管理、環境問題 | 設計ミス(破損、健康障害)、製造ミス(破損、異物混入)、不当表示など |
2 | 欠陥サービス | 説明の不適切、差別的な対応など |
3 | 人事上のトラブル | 評価の不明瞭、不当異動、人権問題(差別、セクハラ、パワハラなど)、従業員の犯罪・不祥事など |
4 | 労務上のトラブル | 労働争議、不当労働行為、職業病、過労死、自殺など |
5 | 会社の過失 | 事故(火災、爆発)、環境汚染、労働災害など |
6 | 経営上の不祥事 | 反社会的行為、スキャンダル、内紛、インサイダー取引など |
7 | 経営上・販売上の判断結果 | 投資・融資・M&A・債権・取引リスク、過当競争など |
8 | 企業犯罪 | 違法行為(独禁法、景表法、下請法、税法、会社法など) |
9 | 企業脅迫・企業への犯行 | 異物混入など嫌がらせ、強盗、破壊活動など |
10 | 経済的・社会的異変 | オイルショック、大停電、株価暴落など |
11 | 国際的・政治的異変 | 戦争、政変、貿易摩擦など |
12 | 天災・疾病 | 地震、風水害、火災、感染症(SARS、鳥および新型インフルエンザなど) |
13 | 経営不安情報 | マスコミの誤報、風説の流布、ネット上の風説 |
事業継続管理(BCM)の構築
大規模災害発生時に備えて、業務継続のための対策に取り組んでいます。
大きな災害や事故で被害を受けても重要業務を中断しないこと、万が一、中断しても可能な限り短い期間で再開することは、企業としての重要な責任です。この認識のもと、コニカミノルタは、ワールドワイドに、かつサプライチェーン※を含めた視点から、この課題に取り組んでいます。
コニカミノルタでは、具体的な行動計画などをまとめた「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を主要事業である情報機器事業、被災時のニーズの高い医療機器をはじめとして各事業部門・子会社が策定するとともに、災害発生直後に被害状況などを情報収集してBCP発動の要否を判断する「初動体制」を整備しています。
具体的には、日本における大規模な地震発生時にもお客様にご迷惑をかけないよう、消耗品、製品の供給をできるだけ継続すること、また既存のお客様へのサポート業務を継続することを基本的な方針としています。そのために、主要な消耗品の生産拠点を分散するほか、調達先についてもリスク評価を行い、リスクの大きい基幹部品については、代替手段や在庫の確保を進め、事業継続体制のレベルアップに努めています。また、コールセンターは東日本地域と西日本地域で相互にバックアップする仕組みとし、どちらかが被災した場合にもサポート対応を継続できるようにしております。さらに、こうしたBCMの質を高めていくために、さまざまな訓練を実施しています。
※サプライチェーン:調達、生産、物流、販売を経て、お客様に製品やサービスが提供されるまでの一連の流れ。
発生したクライシスへの対応とBCMの強化
2011年に発生した東日本大震災では、グループの主要拠点に大きな被害はなく、本格的なBCPの発動には至りませんでしたが、発災後1カ月間は毎朝、コニカミノルタ(株)の代表執行役社長が主催する地震対策会議を実施し、グループの視点での情報収集および適宜、適切な指示、統一的な情報発信を継続しました。その後、いつどこで起こるかわからない大災害に備えて、現場の実践力向上の取り組みを推進しています。
具体的には、グループ全拠点の初動対応マニュアルを、混乱期や、夜間休日にも確実に動けるよう見直し、実践訓練で有効性を検証、マニュアルをさらに改善するPDCAを回しています。
大規模地震の発生時には、東京都千代田区丸の内の本社が災害対策本部となり、代表執行役社長を本部長として7つの班が、迅速な初動対応にあたる体制を構築しています。この体制の検証のため、年に1回、経営トップを含め、本社の災害対策本部と、被災想定の各拠点とを結び、災害対策本部が速やかに被災状況を把握、対応を判断、意思決定するグループ一斉防災訓練を実施しており、2021年11月には、淡路島沖での地震が発生したと想定して、本部員の多くがリモートで参加する形で対策本部を立ち上げ、運営する訓練を行いました。
また、災害時の情報共有ツールとして、国内コニカミノルタグループ全拠点の被災状況をマップ化し、被害全容を把握できる「緊急時情報データベースシステム」、地震発生時には、従業員(および家族)の安否状況の入力を促す「安否確認システム」を整備しており、夜間休日などの緊急時の情報共有ツールとしての社内SNS活用も整備、これら防災ICTにより、初動段階からBCP段階の円滑な対応をサポートしています。2018年6月に発生した大阪北部地震では、実際にこれらICTツールを活用、初動の情報共有に有効であることを確認できました。
2020年1月には、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国の生産拠点を中心として危機管理体制を構築して全社的な対応を開始。その後、3月は欧米販社・生産会社、4月以降は日本拠点と対象を広げ、従業員対応、事業継続対応を行いました。
また、2021年7月・8月に株式会社コニカミノルタサプライズ辰野工場で発生した爆発事故においては、現地、コニカミノルタ(本社、生産部門)からなる危機管理委員会を発生時に立ち上げて情報の共有および対策を決定し、近隣対応、広報対応、安全対策、再発防止策につなげました。
2022年2月に発生したウクライナ問題についても、現地とコニカミノルタ(本社、販売部門)からなる危機管理委員会を立ち上げ、情報共有および対応を行いました。
グループ一斉防災訓練の様子