2022年3月期 第2四半期 株主通信
特集 「計測・検査・診断」領域での事業成長
持続的に成長するセンシング事業
産業界において、数多くのデファクトスタンダードとなる計測機器を生み出してきた当社のセンシング事業は、2021年度第1四半期には四半期最高売上を記録し、着実に成長し続けています。
光源色、物体色計測で独自の存在感を発揮
当社は、長年培ってきた光学技術をベースに、世界シェア6割(当社推定)のディスプレイ光源色計測器をはじめとする「光源色計測」、幅広い業界での色品質管理ニーズに応える「物体色計測」の分野で、ものづくりのバリューチェーンを支える競争力の高い製品を展開してきました。この10年では物体色計測事業が着実に拡大するとともに、成長が見込まれる「光源色計測」「外観計測」「安全・安心・衛生」の領域で優れた技術を持つ企業のM&Aも実施し、売上高が3倍以上と、成長し続けています。
計測機器の需要は、コロナ禍におけるテレワークの普及・拡大や巣ごもりなどによるICT端末の需要増、製造現場の自動化・省人化トレンドによって追い風を受けています。こうした需要拡大は、今後も継続することが見込まれ、光・画像計測検査市場の規模は2025年までに6,000億円から8,700億円に拡大すると見込んでいます。なかでも「外観計測」と「ハイパースペクトルイメージング(HSI)」を戦略的投資事業と位置づけて、さらなる成長拡大を目指します。
光・画像計測検査の市場規模(億円)
※当社推定市場(印刷用は除く)
センシング事業の過去10年の売上高と見通し
自動車外観計測領域での事業拡大を加速
当社は、自動車の内外装の色を測る物体色計測機器の提供を通じて、自動車メーカー、部品メーカーと長年にわたる取引関係を構築しています。
従来は人による目視に依存していた行程が多かった自動車製造における外観検査において、近年、品質向上・安定化、省人化ニーズが高まっています。こうしたニーズに応えるために、自動車外観検査市場の有力企業であるスペインのEines社(エイネス社)を買収し、当社が培ってきた顧客基盤を活かして、Eines社の外観計測システムをグローバルに展開しています。
安全・安心・衛生領域へ、事業を拡大
当社が持つ可視光領域中心の計測技術を拡大するため、多波長計測技術「ハイパースペクトルイメージング(HSI)」の有力企業であるフィンランドのSpecim社(スペキム社)を買収しました。同社の技術によって、物体の表面のみならず、内部成分の検査が可能となり、例えば、異物混入検査やプラスチックや食品の分別など、安全・安心・衛生領域への用途拡大が見込まれます。今後、製薬などの業界に事業を展開していきます。
戦略的な連携が広がる「FORXAI®」コミュニティ
当社は、カメラ、複写機などで培ってきた独自の「画像技術」に、 センサー機器、人工知能、IoTプラットフォームを組み合わせた画像IoT※プラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」を2020年11月に発表しました。FORXAIにより継続的に収集可能となるデータを分析することによって、お客様の現場の課題を“みえる化”し、その課題解決につながるソリューションサービスを提供しています。
このFORXAIを使い、素早く、多様なサービスを創出するべく、多くの企業とパートナー契約を締結しており、すでに医療、介護、ものづくり、マーケティング、農業などの分野で、新たなビジネスが立ち上がっています。今後も、パートナー企業とのコミュニティを広げながら、安全・安心な社会の実現に向けた価値創出を目指します。
※ 当社では、長年培ってきたセンサー機器に最新の画像AI技術やIoTプラットフォームを組み合わせた独自の技術を「画像IoT」と呼び、DXの推進力として強化しています。
丸紅ネットワークソリューションズ(株)と店頭における「人流マーケティング」を開発
「人流マーケティング」は、商業施設内店舗間の相互利用者数、来場者の時間帯別属性、来場者の動線などのマーケティングデータを、消費者のプライバシーに配慮しながら自動的に取得。より効率的な販売戦略の構築や課題解決を支援します。
日本初の未発症者向け
遺伝子診断サービスを開始
当社グループの遺伝子診断事業会社である米国Ambry Genetics社(AG社)は、乳がん検診などの受診者向けに遺伝子診断サービス「CARE プログラム」を2020年から本格展開しています。乳がんは遺伝学的リスクが高いため、AI問診により遺伝学的保因リスクの高い方を抽出し、遺伝子診断を行うことで、早期発見に大きく貢献できます。そして2021年4月からは、乳がん検診率の低い日本でも聖隷福祉事業団をパートナーに同プログラムを開始し、順次、日本全国で展開していきます。
CARE プログラムの流れ
ビジネスパートナーからのメッセージ
社会福祉法人 聖隷福祉事業団
理事 専務執行役員 保健事業部長
福田 崇典 様
私たちは、「遺伝子変異に基づく個別化検診」の実施により、がんの早期発見と予防的治療につなげたいと考えていました。今回、AG社の高精度・高品質な技術と、聖隷の医療・検診のノウハウを集結して、日本初の遺伝子診断サービス「SEIREI-CARE プログラム」を開発しました。
このプログラムは、医療関係者による対面での問診ではなく、オンライン(チャットボット※)問診によって遺伝性の乳がんや卵巣がんのリスクを判別できるため、自宅でも問診を受けられるのが特徴です。問診によってリスクが高いと判断された方にはカウンセリング、遺伝子診断を実施し、その結果をもとにがん検診プランを提案します。また、遺伝性のがんに関する正しい知識を持っていただくプログラムとなっており、啓発・教育活動にもつながると確信しています。このプログラムを一人でも多くの方にご利用いただくことで、ご利用者の生活の質の向上に貢献したいと考えます。
※チャットボット:人と対話しているような応答をロボットが自動で行うコミュニケーション。
聖隷福祉事業団とは?
1930年(昭和5年)、当時不治の病とされていた結核患者さんのお世話をすることから始まり、その後医療機関へと発展しました。現在は病院に加え、介護施設、在宅サービス、有料老人ホームなど、全国に214施設・518事業を展開しています。