コニカミノルタは、適切な投薬・治療を可能にし、創薬の効率化を支援する
プレシジョン・メディシン分野への取り組みを加速。
グループ各社のシナジー効果を追求し、ヘルスケア事業の強化に取り組んでいます。
より付加価値の高いプレシジョン・メディシンの分野へ経営資源をシフト
ヘルスケア事業は当社の柱の一つになっており、同事業のさらなる拡大に向けて現在注力しているのが、プレシジョン・メディシンの分野です。
プレシジョン・メディシンとは、個人の体質を遺伝子やタンパク質など分子レベルで判別して精密に層別化(グループ化)することで、初期診断の高度化や適切な投薬・治療を可能にするものです。当社では、X線診断装置、超音波診断装置や、医療ITソリューションの開発・提供といった従来の事業から、より付加価値の高いプレシジョン・メディシンの分野へ経営資源のシフトを進めています。
こうした取り組みの一環として、2017年10月に、米国における遺伝子診断ビジネスでトップクラスの実績を持つAmbry Genetics社(AG社)※を買収しました。また、同年11月には、同じく米国で創薬支援サービスにおける豊富な実績を持つInvicro社(米国)をグループに加えました。さらに、2018年1月には、プレシジョン・メディシンへの取り組みを推進するグローバル本部を米国に設立しました。このように、当社は医療の発展や健康の維持・増進に貢献する事業を加速することで、2021年度までに売上高を1,000億円以上にすることを計画しています。
※AG社の詳細は、以下のページで紹介しています。
ヘルスケア事業の方向性
Invicro社を買収し、創薬支援サービスを本格的に展開
医薬品の開発支援業務受託機関として創薬支援サービスを展開するInvicro社は、特にがんやアルツハイマー病など中枢神経系のバイオマーカー※の探索・設定に強みを持ち、製薬会社を中心に約140社にサービスを提供しています。
製薬業界は毎年巨額の研究開発費用を投じており、その額は全世界で年間約15兆円にものぼります。なかでも、遺伝子組換えや細胞培養などの技術を活用するバイオ医薬品の分野は、投資が大きく拡大しています。バイオ医薬品は、疾患に直接作用することから副作用が少なく、がんやアルツハイマーなどの疾病にも効果が期待できるなど多くのメリットがある一方で、開発には時間とコストがかかるため、製薬会社の多くはその研究開発業務を外部の専門企業に委託しています。
当社は、こうした製薬業界のニーズに的確に応え、バイオヘルスケア事業の拡大を図る戦略を推進しています。今後は、Invicro社の保有技術と、当社が銀塩フィルムで培った材料技術を活かして開発したタンパク質の精密定量化技術(HSTT)やAG社が持つ遺伝子診断技術を組み合わせることで、より精密なバイオマーカー探索・設定を実現する付加価値の高い創薬支援サービスを提供していきます。
※血液、尿などに含まれる遺伝子やタンパク質など身体の状態を示す指標。
バイオヘルスケア事業の売上計画
Invicro社CEOインタビュー
Jack Hoppin
CEO, Invicro LLC
コニカミノルタグループに加わった理由をお聞かせください。
当社がコニカミノルタグループの一員になった最大の理由は、その理念とビジョンに共鳴したことです。これまで当社に対してはいくつかの買収提案がありましたが、コニカミノルタは、当社の運営状況の健全性を確保しながら、安全で正しい方向へ導いてくれる戦略的パートナーであると思いました。
これに加え、コニカミノルタが品質を重視している企業であることも大きな理由の一つです。当社のようにサイエンスとエンジニアリングの知見やノウハウをビジネス展開の根幹としている企業にとって、品質は競争力の維持を左右する極めて重要な要素であるからです。
山名社長と初めて会ったのは、2017年5月のことです。それからすべてが驚くべき速さで順調に進みました。コニカミノルタは、ともに医療分野の社会課題解決に取り組むパートナーとしてこれ以上ない相手であり、半年後の11月に契約書に署名したことは、正しい判断だったと確信しています。当社は製薬会社への創薬支援サービスで実績をあげてきましたが、コニカミノルタには当社の能力を継続的に発展させる事業基盤があります。経営統合によって、当社はそうした基盤を活用して非連続な成長を実現するとともに、科学分野における使命の達成を数年分加速させられると考えています。
Invicro社の強みはどのようなところにありますか。
データを活用・応用する力の優れた企業こそがこれからの世界において成長する――さまざまな経験からそう考え、2009年にアパートの一室で創業した当社は、現在では約330名の社員を擁する企業に成長しました。
当社の社員のうち200名以上は新薬の研究開発をサポートする科学者で、60名以上は修士もしくは博士を保有しています。また、社員の専門分野は、生物、化学、化学工学、生物医学工学、電気工学など多岐にわたります。イノベーションは、異分野のコラボレーションから生み出されるものですが、CRO(医薬品開発支援業務受託機関)のなかで、当社ほど多様な専門分野に対応でき、かつ高い研究能力を備えた企業はほかにありません。強みであるデータ管理システムや大容量データ処理システム、最先端設備などのインフラ面でも、当社は同業他社にはない高度な環境を整備しています。
もう一つの特徴は、前臨床試験段階での画像診断から、ヒトによる最初の臨床試験、世界各地の複数の医療施設での臨床試験に至るまで、CROに求められるすべての能力を備えていることです。こうした企業もほかにはなく、当社は製薬会社のみならず、競合する複数のCROにもサービスを提供しています。
統合によって、どのようなシナジー効果を期待していますか。
莫大な研究開発費がかかるバイオ医薬品開発の成功率を高めるためには、臨床試験よりも前、すなわち初期の研究開発段階におけるバイオマーカーの探索・設定が鍵になります。当社は、この分野で豊富な実績を積みあげてきましたが、コニカミノルタにはタンパク質の精密定量技術(HSTT)、AG社には高度な遺伝子診断技術があり、3社の技術の融合を図るのは当社にとって夢のような取り組みです。
例えば、当社は組織画像をデジタル化して分離する画期的な三次元デジタル病理診断システムを有しています。このシステムとバイオマーカーを定量化するHSTTを組み合わせることで、きっと新たなイノベーションが生まれるはずです。
また、AG社とのシナジー効果にも期待しています。AG社は遺伝子プロファイリング分野のトップ企業で、当社はデジタル病理診断・医療画像分野のトップ企業です。両社の技術を融合すれば、製薬会社により質の高い臨床試験サービスやプロファイリングサービスを提供できると確信しています。
当社、そしてコニカミノルタ、AG社の研究チームを合わせると、研究員の数は約500名になりました。これほどの多くの優秀な人財を揃える企業は業界にはないでしょう。私は、これこそが経営統合の意義であると考えています。すでにコニカミノルタの研究開発チームがボストンに8週間滞在して、当社のチームと共同研究に取り組んでいますが、企業文化の相性も非常に良く、手応えを感じています。
今後の目標やビジョンについてお聞かせください。
私は、プレシジョン・メディシンへの取り組みを中心的に担う3社のすべての技術やノウハウ、研究データを蓄積・活用できる統合プラットフォームの構築を実現したいと考えています。遺伝子からタンパク質、細胞、臓器までをカバーするプラットフォームは、コニカミノルタグループの競争力や市場における優位性を高め、経済的・社会的価値を向上させてくれるはずです。
コニカミノルタグループに加わったことで、当社は東京、ロサンゼルス、ニューイングランド、ボストン、ニューヘイブン、ロンドンと世界中にオフィスを持つ企業となり、グローバルチームならではの多様な視点から新しいアイデアも生まれています。グループの総合力を活かして、また、グループ各社と協力して、世界各地の製薬会社や創薬ベンチャーに価値あるサービスを提供していきます。
医薬品の研究開発費の推移