2030年にカーボンマイナスへ
気候変動をはじめとする環境問題は今、企業の持続可能性を左右する課題として関心が高まっています。当社では、2009年に、2050年を見据えた長期環境ビジョン「エコビジョン2050」を策定し、環境問題による将来的なリスクに備えるとともに、環境課題の解決を事業成長につなげることをコンセプトに環境活動を推進してきました。
「エコビジョン2050」は、2017年に「2050年にカーボンマイナスの実現」という目標を掲げ、進化しました。カーボンマイナスの実現には、自社製品のライフサイクルにおけるCO2排出量を2005年度比で80%削減するとともに、お客様やお取引先の環境課題解決の支援を通じて、自社製品のライフサイクルに関わらない範囲のCO2排出量を削減することが必要です。すなわち、自社の責任範囲であるCO2排出量を上回るCO2排出削減効果を生み出すことでカーボンマイナスの達成を目指しています。
そして、2020年度、2030年を見据えた長期の経営ビジョンおよび中期経営戦略「DX2022」の策定を機に、このカーボンマイナスの達成目標を2030年に前倒すことを決めました。その背景には、前中期経営計画期間での成果があります。2019年度には自社製品のライフサイクル全体のCO2排出量を2005年度比で約50%削減したほか、CO2排出量、資源利用量の削減と連動して、生産工程では3カ年で約18億円のエネルギーや資源の費用削減の効果をあげました。また、自社の環境ノウハウをお客様に提供する「グリーンマーケティング活動」により、製品・サービスの商談が増加し、2019年度は7.8億円の売上貢献につながりました。このように、前中期経営計画期間では環境課題への取り組みを収益拡大につなげることができたと考えています。
こうした成果を踏まえ、CO2削減への取り組みを加速させることで、事業成長を促進していくとともに、デジタル技術を活用して多くの企業と連携する環境のエコシステムを構築し、「2030年にカーボンマイナス実現」というチャレンジングな目標の達成を目指します。
カーボンマイナスを2030年に前倒し
DXによって、より大きな環境負荷の低減へ
2020年度からはDXを活用して、お客様やお取引先など、より多くの企業との連携を加速し、環境負荷低減の拡大に挑みます。
例えば、お取引先に当社の環境ノウハウを提供する「グリーンサプライヤー活動」のデジタル化もその一つです。これまでは当社の専門家がお取引先の工場に赴いて省エネ診断と施策の実行を支援してきましたが、そのノウハウをデジタルにより自動化し、お取引先が自ら省エネ診断と施策を実行できるシステムを開発しました。これにより、活動の対象範囲を飛躍的に拡大し、環境負荷低減とコスト削減をさらに加速させることができると見込んでいます。
DX-グリーンサプライヤー活動
そしてもう一つの新たな施策が、2020年6月に開設した「環境デジタルプラットフォーム」です。これは、当社と参加企業各社がそれぞれ持つナレッジ、ノウハウを共有し、新たな価値を共創することで、環境経営の効率を高めることができるエコシステムです。豊富なノウハウやグローバルなソリューション手法を持つパナソニック株式会社に幹事企業としてご協力いただき、当社が運営を行っています。参加企業は15社でスタートしており、今後も順次拡大することで共創の輪を広げていきます。
このプラットフォームは、個社だけでは解決が難しい課題に対して参加企業の技術・ノウハウを結集して新しい解決策を生み出す「ソリューションの“共創”の場」と、参加企業が自社実践によって培った環境技術・ノウハウを共有・活用する「ソリューションの“提供”の場」で構成されています。これら2つの場を通じて、企業間の連携による環境課題解決の迅速化、そして共創によるイノベーション創出を促進させ、地球規模での環境課題解決に寄与していきたいと考えています。
「DX2022」の3年間でこのような多くの企業と連携する取り組みを軌道に乗せ、環境負荷低減効果の飛躍的拡大と同時に、収益の拡大にも寄与することで、企業の持続的な成長を図ります。