顧客接点を活かして、
ソリューション型ビジネスを強化
当社がこれまでに構築してきた世界150カ国のセールス/サービス体制と約200万社のお客様とのつながり、その顧客基盤は当社の成長を支える大きな資産です。また、当社は、早くからお客様と直接の接点を持つことを重視し、代理店を通さない直接販売体制を整備してきました。これにより、お客様の現場の課題をより深く洞察し、ニーズに適合した提案を行うことが可能となっています。
こうした広く、深い顧客接点はコニカミノルタならではの強みです。当社では、この強みを最大限に活かし、機器単体ではなく、さまざまなサービスと組み合わせたソリューションを提案することで、顧客価値の向上と収益力の向上を図っています。
例えば、デジタルワークプレイス事業では、ペーパーレス化によるプリントボリューム(PV)の減少を見越して、10年前からM&AなどによってITサービスの提供能力を強化してきました。それと同時に、複合機とITサービスを組み合わせて、お客様の業務課題の解決につながるソリューションを提供するハイブリッド型販売を推進してきました。従来は、4~5年ごとにある複合機の更新タイミングにあわせて営業アプローチをしていましたが、ITサービスの提供を開始したことで、お客様に提案する頻度も増加し、顧客エンゲージメントも高まっています。このような取り組みを続けた結果、かつて7割程度だったリテンション率は85%まで上昇し、顧客1社当たりの収益も向上するなど、着実に成果に表れていると認識しています。
さらに、前中期経営計画「SHINKA 2019」の期間において、PVに頼らない新たなビジネスモデルを構築すべ次世代プラットフォーム「Workplace Hub」の展開を開始しました。これを今後さらに拡販していくうえでも、約200万社のお客様の多くと直接接点を持っていることが強みとなります。
Workplace Hubについては、お客様の満足度と当社の提供しやすさを両立したファームウェアバージョンの完成に時間を要し、当初販売計画には至っていませんが、2020年度以降、Workplace Hub、複合機、ITサービスを組み合わせ、特化した業種へのソリューション・提供価値を拡大することでお客様の「Intelligent Connected Workplace※」を実現し、業務効率化や生産性向上に貢献していきます。
※Intelligent Connected Workplace:必要な人や情報がつながり、いつでもどこでもだれとでも価値を創造できるスマートな職場環境。
顧客接点を活かした販売強化施策
科学的販売アプローチで、営業効率の向上へ
顧客接点をさらに増加させていくうえで新規顧客の開拓が不可欠ですが、通常のセールス手法では無駄足が多くなり、効率が良くありません。そうした課題を解決するため、米国の情報機器事業で科学的な販売アプローチを導入しています。
当社は、以前からお客様のプロファイルをデータベース化してきました。このデータをAIによって分析することで、業種や規模から販売が期待できる商材や利益率の傾向を導き出し、新規顧客開拓のパイプライン(潜在的な有望顧客のリスト)を作成します。このリストを営業活動の起点とすることで、商談の初期段階から効果的な提案が可能となり、営業効率も顧客満足度も高まっています。
こうした販売アプローチは、当社の豊富な顧客基盤があってこそできるものです。とりわけウィズコロナの状況下では、対面での商談が難しくなっているため、いかに非対面でお客様ニーズを把握できるかがポイントとなります。そうした意味でも、科学的アプローチを、米国から他地域へ、情報機器事業から他事業へと水平展開し、有効に活用していくことが重要になると考えています。さらに、新中期経営戦略「DX2022」の3年間では、データ分析で活用しているAIを用いてこのアプローチをさらに進化させ、お客様のタイプごとに最適な提案書を自動生成するという新たな取り組みを進めていきます。
加えて、顧客エンゲージメントの進捗を科学的に評価・検証する仕組みも導入していきます。これまでは、お客様が他のお客様に推奨したいかどうかをスコアリングするNPS(Net Promoter Score)を参考にしてきましたが、これを進化させて、「当社の製品・サービスを使い続けたいかどうか」という当社なりの基準を作成して、お客様にスコアリングしていただきます。そして、その評価を週単位で集計・分析し、翌週の販売活動に活かす、といった独自の評価システムを導入していきます。
One Konica Minoltaアプローチで、顧客価値の創出へ
さまざまな業種業態のお客様との接点において、当社が洞察する多種多様なお客様の潜在的な課題のなかには、多くのビジネスチャンスがあります。そうしたチャンスを逃すことなく活かし、ビジネスを拡大していく。そのために、事業の枠を越えたOne Konica Minoltaで、当社ならではのソリューションを提供し、より大きな顧客価値の創出を図っています。
例えば、セキュリティーを強化したいという学校のニーズに対しては、IT関連のセキュリティーに加えて、監視カメラによって不審者の侵入をモニタリングするというソリューションも提案しています。また、業務改革を進めたいという自治体のニーズに対しては、ワークフローの棚卸とアセスメントによって大量の書類を電子化して一元管理するドキュメントソリューションに加えて、保健所の業務を効率化するヘルスケア関連のソリューションもあわせて提案するケースもあります。こうした多面的な提案活動を推進するために、各事業の販売機能を一つの販売会社に集約し、事業別の販売体制からお客様の業種業態にあわせた体制へと変更してきました。これにより、お客様の業種業態ごとの課題を深く理解し、最適なソリューションを複合的に提案することが可能となります。同時に、各国・各地域の成功事例をグループ内で水平展開できる仕組みも整えています。
さらに、セキュリティーなど特定の分野に精通したエキスパートがお客様との商談に加わって、現場でアセスメントやインプリメンテーションを行うという機会も増えています。今後、こうした機会をさらに増やしていくために、欧州のエキスパートをアジアのお客様の商談に参加させるといったようにクロスボーダーでの活用を進めていくとともに、各分野のエキスパートの育成にも注力していきます。
当社が培ってきた豊富な顧客接点は今後の成長の源泉となるものであり、事業の枠を越えて活用していくことで、より大きな成長につなげられると確信しています。今後もOne Konica Minoltaでの提案活動を、もう一段、二段と加速させていきます。
マーケティング責任者インタビュー
Kay Du Fernandez
Konica Minolta Business Solutions U.S.A.
Senior Vice President, Marketing
Olaf Lorenz
Konica Minolta Business Solutions Europe
Senior General Manager,
International Marketing Division
Q1:顧客接点を強化するにあたり、重視していることを教えてください。
- Lorenz
- 当社では、お客様との対話を通じてニーズや関心を深く洞察し、誠実に向き合うことで長期的な信頼関係を構築しています。こうしたお客様との関係づくりは、取引をベースに顧客との関係を築く企業が依然として多いなかにあって、当社の強みになっています。加えて、お客様とのさまざまな接点においてカスタマーエクスペリエンスを測定し、社内のマーケティング・営業担当者と密接に連携することでカスタマーエクスペリエンスのさらなる向上を図っています。
- Fernandez
- お客様と良好な関係を構築するには、お客様の購買行動に関する深い知識と洞察が必要になります。そこで、私たちは数年前からカスタマージャーニーマップを利用することで、「認知」「検討」「購入」「継続使用」の各段階における顧客接点を整理するとともに、対応方法を最適化しています。これにより、すべての顧客接点を最大限に活かし、魅力的なカスタマーエクスペリエンスを効率よく生み出すことを可能にしています。こうした取り組みがマーケティング分野のDX化に役立っています。
Q2:マーケティング活動において注力している取り組みを教えてください。
- Fernandez
- 米国では戦略分野の一つとして「デマンドジェネレーション(営業見込み案件の創出)」に注力しています。顧客データの活用は、有望な顧客層を確保するうえで鍵となります。そこで、AIを用いた顧客データの分析によって特に利益率の高い顧客層を特定して、共通のニーズを持つ業界や企業を営業ターゲットとして絞り込み、効率的かつ最適にソリューションを提供しています。こうしたデジタルマーケティングによって長期的かつ強固なパートナーシップを実現しているのです。また、販路開拓にも重点的に取り組んでおり、このAIを用いた手法を約300社の当社代理店にも共有することで、営業活動、デジタルマーケティング、ソーシャルメディア戦略をサポートしています。
- Lorenz
- 欧州でも米国と同様に、マーケティングオートメーションとデータ解析を主体として顧客ニーズを把握する科学的な販売アプローチを採用しています。こうした手法は、潜在的な新規顧客の発見や既存の取引関係の強化に役立っています。例えば、ある世界的な自動車メーカーに対して、顧客分析に基づいてニーズに対応するとともに、顧客の競争力強化につながる機能を提案し続けることで、10年以上にわたる契約更新につながっています。
- Fernandez
- 当社はペルソナ(顧客像)を非常に重視しています。そのため、綿密な調査に基づいて正確な顧客区分を設定し、その業種業態やCEO・CIO・各部門などの特定の役割にターゲットを絞り、それぞれのニーズに適したメッセージの発信に努めています。
Q3:ポストコロナの時代を見据えて、今後、ビジネスをどう強化していきますか?
- Fernandez
- 人々が対面でやり取りする機会が減少している一方で、人と人との密接なつながりがこれまで以上に重要視されています。そこで、私たちはこうした状況にあわせてマーケティング手法を再整理し、いち早くバーチャルイベントやウェビナーを企画しました。これらのイベントでは、AccurioPress C14000のような画期的な製品のバーチャルデモなどを実施し、参加者の関心に応えています。初期のイベントには350人以上の方々に参加いただき、好評だったことから、継続的に開催しており、 参加者が新しいお客様になるケースも出てきています。
現在、私たちは、こうしたバーチャル体験をより進化させる新たな方法を企画しています。例えば最近では、グループ会社であるMGI社製の革新的なスポットニスコーターのデモに先立って、参加者に印刷物のサンプルを郵送することで、バーチャルとリアルを融合したデモを実現しました。
さらに、現在、コロナ禍で私たちが最優先事項として進めているのが、eコマース環境の整備です。グローバルプロジェクトを立ち上げ、自動取引システムやオンライン販売方法について具体的な検討を進めています。
- Lorenz
- 新型コロナウイルス感染拡大以前から、当社のビジネスモデルは、製品提供型からソリューション提供型のビジネスに移行してきました。オフィス業務環境は常に変化し続けています。当社は「Intelligent Connected Workplace」を主要なサービスの一つとして提供していますが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、幅広いビジネス環境のデジタル化をさらに加速する必要性が高まっています。私たちのソリューションは、点在するさまざまな環境の職場をつなぎ、場所に縛られない生産的な協働を支援するため、ポストコロナの世界においても有用です。私たちは、これからもデジタルイノベーションを追求し、テレワークソリューションや未来のワークプレイスの構築に最前線で取り組んでいきます。
- Fernandez
- 米国では、コロナ禍において「Return to Work」という新たなソリューションを開始しました。これは、バーチャル検診によってロックダウン後の従業員の職場回帰をサポートするソリューションです。このソリューションは、現状の市場ニーズを踏まえると、迅速な開発が必要でした。そこで、当社の顧客企業担当チーム、ソリューション開発チーム、マーケティングチームが一丸となって取り組み、わずか8週間で実用化することができました。また、当社グループの遺伝子検査会社Ambry Genetics社にも協力してもらっており、まさにOne Konica Minoltaによって実現した成果といえます。
- Lorenz
- One Konica Minoltaの実践例として、欧州では現在、「Box Defect Detection System」という製品の欠陥を検出するシステムの開発を進めています。このセンサーシステムは動画解析を主体とするものですが、当社が持つカメラ技術、センサー技術、その他の複数の機器を組み合わせることで、人に頼っていた業務を完全に自動化することができます。このシステムは、リモート化や自動化が加速する製造業・物流業に貢献するソリューションです。このように、当社の各事業のリソースを結集することで、ポストコロナの世界でもお客様から必要とされるソリューションを提供し続けていきます。