新型コロナウイルス感染拡大を受けて 未曾有の危機をグループの総力を結集して乗り越えていきます。
はじめに、新型コロナウイルス感染症によって亡くなられた全世界の方々に謹んでお悔やみを申し上げるとともに、罹患された方々が一日も早く回復されますようお祈りいたします。また、感染拡大防止に向けて第一線で働く政府・自治体職員の皆様や医療現場で日夜感染者の診断・治療に尽力されているプロフェッショナルの皆様に、心から敬意を表します。
ウイルスの拡大が世界に広がるなか、コニカミノルタグループでは従業員とその家族の健康と安全の確保を最優先に感染防止に努める一方、新型コロナウイルスと戦う多くのお客様を支援すべく、最大限の努力を続けてきました。例えばロックダウン中の中国・武漢の病院に超音波診断装置を寄贈したり、あるいは非接触・リアルタイムでの体表温度測定システムを提供したりと、グループ従業員がそれぞれの現場で奮闘してくれました。そうした活動が皆ボトムアップで立ち上がったものだったことを私は誇りに思います。多くの従業員が世の中を良くしたい、社会に役立ちたいという真摯な想いを抱いていることは、コニカミノルタという企業が受け継いできた良きDNAであると思っています。
今後、少なくとも数年間は、新型コロナウイルスと共生しながらの事業活動が続くと覚悟しています。そうしたニューノーマルの時代においても、私たちは人々の仕事や暮らしに役立ちたいという気持ちを持ち続け、全従業員一体となって事業変革のスピードを加速させて難局を乗り切っていきたいと思います。
前中期経営計画「SHINKA 2019」の振り返り 厳しい市場環境のなか、経営目標は大きな未達に終わりました。
2014年のCEO就任以来、私が一貫して取り組んできたのは「顧客価値」を深く追求し、優れた製品をモノとして提供する会社から「課題解決(コト)によるバリューを提供する会社」へと変わることでした。「TRANSFORM 2016」「SHINKA 2019」という2つの中期経営計画を通して、当社グループは無形資産である「全世界200万社の顧客とのつながり」を活かし、お客様の業務の効率化や売上拡大に寄与する「価値」を提供することで、お客様とのつながりをより深化させ、強固な信頼関係を築くことを目指してきました。
この目的のために各事業分野では、プロダクト主体のビジネスから、画像やデータを活かしたサービス主体のビジネスへと転換を図ってきました。同時にお客様の初期投資がかからず、中堅・中小企業のお客様にも導入していただきやすいリカーリング(継続収益)型のビジネス構築を進めてきました。そうしたビジネスモデルの転換については、この6年間である程度計画通りに進めることができたと私は評価しています。
計数面では、2018年度までは計画には少し遅れながらも堅調に推移しましたが、「SHINKA 2019」の最終年度となる2019年度の連結売上高は9,961億円、営業利益は82億円と、計画を下回る結果となりました。これらは経営トップである私の責任であると重く受け止めています。なぜ計画が未達となったのか、以下にその要因を「外部環境」と「事業活動」に分けて説明します。
基盤・成長・新規事業の営業利益
計画未達要因①:外部環境の変化
デジタル化の進展やAIの普及によってこの3年間でさまざまな業種・業態のビジネスの現場が急速に変化しました。この変化は、世界の印刷産業にも大きな影響を与えました。中国やインド、ASEANなどの成長国ではデジタル印刷市場が拡大した一方、欧米など先進国ではデジタルを活用した働き方改革や行政処理の電子化などの進展を背景にプリントボリュームの成長が鈍化しました。ただし、こうした市場変化は想定通りであり、後述するように必要な対応策は打ってきました。
一方、グローバルの経済環境が厳しくなることは、2017年度の「SHINKA 2019」の策定時にもある程度予想していました。しかしながら2018年度後半からはその想定以上に米中貿易摩擦が激化し、中国経済の成長減速、欧州経済の停滞、そして世界的な設備投資意欲の減退を引き起こしました。これらによって当社の各事業もマイナス影響を受けました。さらに米中貿易摩擦に起因する中国生産製品への追加関税は、中国で生産活動を行っている主力のオフィス・プロフェッショナルプリント事業の利益を押し下げる要因となりました。
また、2019年度末に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、想定外の出来事でした。コロナ禍によって当社事業も顧客先への営業活動や受注済製品の設置などで大きな制約を受けました。特に2020年3月に始まった欧米でのロックダウンは、この期間が最需要期となるオフィス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業の売上、利益に多大なマイナス影響を与えました。
計画未達要因②:基盤事業の収益力低下と、新規事業の収益貢献の遅れ
基盤事業においては、全社売上の約55%を占めるオフィス事業の「稼ぐ力」を十分に高められなかったことが全体の収益に大きく影響しました。主要因の一つは、7年ぶりにフルモデルチェンジした複合機の量産においてマレーシアでの立ち上げ時に設計の堅牢性に起因する課題の解決に時間を要したことです。歩留まりが上がらないなか、品質確保と供給を最優先した結果、想定より原価が上昇したことで計画していた利益を出せませんでした。
一方、プロフェッショナルプリント事業においては、プロダクションプリント市場が想定したほど拡大しなかったことが誤算でした。当社が注力する商業印刷市場で当社はトップシェアを維持できていますが、この3年間で成長国の市場は拡大したものの、先進国の商業印刷領域でのデジタル化は想定したほど進みませんでした。
新規事業では、オフィス事業で培った顧客基盤を活かして新たなサービスのプラットフォームの確立を目指した「Workplace Hub」のビジネス拡大が計画していたスピードでは進みませんでした。メインターゲットである中堅・中小企業のお客様にはこの製品の提供する価値が一定程度には認められたのですが、顧客数が拡大していくなかで、価値を継続的に提供していくための基本システム開発に想定以上に時間がかかり、最終的な形にバージョンアップできたのが2020年2月でした。この計画の遅延が目標未達となった最大の理由です。
一方、バイオヘルスケアの分野では、2017年度にAmbry Genetics社、Invicro社の2社の大型買収を実施して米国を中心に事業を始動させました。両社とも技術力の高さは期待通りであったものの、マーケティング力や保険会社との交渉力の面で課題が顕在化し、経営クラスの人財の入れ替えなど基盤づくりの支援に時間を要したことで、計画よりも事業拡大が遅れている状況です。
基盤事業において、この3年間で、次の成長につながる布石も打ってきました。
上記のように外部環境の想定外の変化や、計画通りに進まなかった事業があった一方で、この3年間で大きく前進できたことや、得られた成果も少なからずあったことも強調しておきたいと思います。
まずオフィス事業については、先述した複合機新製品のマレーシアでの量産に関わる諸問題は、すでに解決済みです。現在は中国での生産と同等以上の原価低減を実現しています。A3カラー複合機においては、業界最高のセキュリティー機能などを搭載した新製品により競争力が向上していると手応えを感じています。また、2019年度には高速・中速・低速の各製品セグメントの市場投入が完了したことで2020年度からはフルラインナップで展開する体制を整えられたことも収穫といえます。
またプロダクションプリント事業については、ミッドプロダクションプリント(MPP)機およびライトプロダクションプリント(LPP)機の市場においてNo.1のポジションを維持しつつ、2019年度には当社として初めてヘビープロダクションプリント(HPP)機を市場投入することができました。大量印刷需要を狙いとする同製品は今後のプロダクションプリント事業の大きな柱として期待されるものです。
産業用材料・機器事業では、機能材料分野でディスプレイの大画面化、採用技術の変化を想定した高付加価値製品へのシフトが奏功し、競争優位を確立しました。また2019年度の後半には新樹脂フィルムの顧客認定も進み、顧客ニーズへの対応力向上によるさらなる高付加価値化への道筋をつけることができました。計測機器分野においてもモバイル製品の拡大および当社顧客の多様化により、ディスプレイの色計測での事業基盤を強化できたほか、成長分野と位置づける外観計測の事業化も進展しました。
オフィスでのプリントレス化の加速を覚悟して、事業ポートフォリオ転換を加速させます。
成長・新規事業に関しては、大きな利益を生むビジネスが未だに育っていないことは事実です。しかしながら、将来のオフィスプリントの需要減少を見据えた事業ポートフォリオ転換の基本的な方向性は間違っていないと、私は確信しています。コロナ禍によって、オフィスで働く人々のワークスタイル、ワークプレイスが大きく変化したことで、オフィスプリントがピークアウトする時間軸が早まると考えざるを得ません。そういった環境下で、当社が生き残っていくには「オフィスプリントによる収益に依存しない事業構造」の構築を加速させなければいけないと認識しています。
非財務面においても、環境や人財での成果がありました。
上記のような事業面での成果とともに、「SHINKA 2019」の3年間は非財務面でもさまざまな成果がありました。特に環境への取り組みに関しては、気候変動リスクへの意識が世界的に広がるなかで当社が掲げてきた「カーボンマイナス」の活動に対して顧客企業やサプライヤーのみならず、他業界にも賛同の輪が広がり、日本の産業界全体で環境ノウハウを共有する「環境デジタルプラットフォーム」という形で具現化したことは大きな成果と言えるでしょう。
また、無形資産という観点では人的資源(人財)を強化できたことも3年間の成果です。ダイバーシティの推進は当社が新しい価値を創造していくために必要不可欠です。当社グループでは女性や外国人の積極登用に加え、顧客の業務を理解する力を強化すべく人的シフトも進めてきました。さらにこれまでの積極的なM&Aによって多くの優秀な人財を獲得できました。特に今後のデジタルトランスフォーメーション(DX)の鍵を握る「画像IoT人財」については国内外で約500人まで増員でき、今後の成長に向けた人的基盤の整備を大きく進めることができました。
2030年を見据えた長期の経営ビジョン 当社の存在意義を改めて見つめ直し、長期の経営ビジョンを策定しました。
当社は2030年を見据えた長期の経営ビジョンを策定しました。この目的は、新型コロナウイルス感染症の完全終息が見えないなか、10年後に自分たちの“ありたい姿”、グループが一体となって向かうべき方向を定め、そこからのバックキャスティング(逆算思考)により、「今、何をなすべきか」をより明確化していくことにあります。
長期の経営ビジョンの策定にあたり、私たちは「10年先を見据えて当社の社会的な存在意義とは何か?」を徹底的に議論しました。
コニカミノルタは創業以来、カメラ・フォト事業で培ってきた画像の入出力、画像処理を中核とするイメージング技術をコアに、世界中のお客様の「みたい」というニーズに応えてきました。このイメージング技術こそが、私たちの原点であり、DNAだと私は考えます。そのDNAをこれからも受け継ぎ、人々のさまざまな「みたい」に応え、顧客企業で働くプロフェッショナルの生産性・創造性を向上することで、その先の人々(エンドユーザー)の生きがいや幸せを追求し、さらには持続的な社会の実現に貢献していくこと、すなわち「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」を高次に両立させるところに当社の存在意義がある。それが私たちの辿り着いた結論でした。
こうした考えを集約したのが「Imaging to the People」という経営ビジョンステートメントです。この言葉は、お客様の「みたい」を実現する当社のDNAと、現場のプロフェッショナルを支え「人間中心の生きがい追求」と「持続的な社会の実現」の高次での両立を目指す当社の存在意義をストレートに表現していると思います。
当社の社会的存在意義
経営ビジョン(2030年に目指す将来の姿)
10年後に向け重視する社会価値を明確化し、マテリアリティを再特定しました。
2030年に向けて経営ビジョンを実現していくためには、これからの世界がどのように変化し、どのような社会課題が顕在化してくるのかを考える必要もあります。そこで長期の経営ビジョンの策定とあわせて10年後の社会課題を想定し、その解決に向けて当社が提供すべき社会価値を明確化し、「5つのマテリアリティ」を特定しました。
これらのマテリアリティは、当社グループが持っている無形資産を結集することで、特に大きな社会価値を生み出せるテーマを示したものです。この5つのマテリアリティごとに「2030年に目指す姿」を定め、中長期的な価値創出の方向性を明確にしました。
そして、2030年に目指す姿からのバックキャスティングによる3カ年の中期経営戦略を策定しました。今後、5つのマテリアリティごとに、環境・社会の課題解決によるインパクトを定量化した「環境・社会価値」と、それによる収益貢献を定量化した「経済価値」をKPIとして設定していく考えです。これらを各事業部門の事業計画に落とし込むことで、事業成長とサステナビリティを統合した取り組みを進めていきます。
5つのマテリアリティ
「B to B to P for P」のアプローチにより、経営ビジョンの実現を目指します。
社長就任以来、私はサステナビリティと経営戦略・事業戦略はイコールであり、持続可能な社会の実現に貢献することこそが企業の持続的成長をもたらすとの確信のもと、経営に取り組んできました。社会課題の解決に資する新たな価値の創造が、成長の基盤になるという考え方はコニカミノルタ発足以来の考え方でもあり、グループ全体に浸透しています。現場の従業員一人ひとりが「6つのバリュー」の意味を自らの頭で考え、自律的に判断・行動できることが、コニカミノルタの大きな強みです。
経営ビジョンの実現に向けた当社のアプローチを私は「B to B to P(Professional) for P(Person)」と表現しています。これは単なるB to Bの商品・サービス提供ではなく、モノづくりや医療・介護などさまざまな業種・業態の“現場”で働く人々(Professional)の業務変革を支援することで、その先にいる生活者やエンドユーザー(Person)の生活をより豊かにし、同時に現場の人々の生きがいや働きがいを高めることを目指すものです。すべての事業領域においてイメージング技術を活かし、当社人財の個々が輝くことで、「B to B to P for P」のアプローチで現場の課題を解決し、より多くの人々が生きがいと幸せを感じることのできる社会を創っていきたいと思います。
長期の経営ビジョン実現に向けたアプローチ「B to B to P for P」
中期経営戦略「DX2022」 前中期経営計画期間の仕込みを、着実に成果につなげていきます。
2020年度から中期経営戦略「DX2022」がスタートします。この「DX2022」の3年間の最大の課題は、「SHINKA2019」の期間に仕込んできたこと、あるいはやり残したことを、しっかりと実行し、確実に成果につなげていくことです。また「DX2022」は、経営ビジョンで示した“ ありたい姿” を実現していくためのマイルストーン(道標)でもあります。この3年間を、長期の経営ビジョンからのバックキャスティングにより
「何をなすべきか」をグループ全体にしっかり刻み込んでいく期間としても重視しています。
「DX2022」の基本方針は「DXにより高収益のビジネスへと飛躍する」こと、そして「真の社会課題解決企業へと転換していく」ことです。顧客価値をさらに高めていくために、これまで「基盤・成長・新規」の3つの事業区分を見直すとともに、事業セグメントについても戦略に従って見直しました。
従来のオフィス事業は「デジタルワークプレイス事業」とし、複合機、ITサービス・ソリューション、「Workplace Hub」を組み合わせてお客様企業のDXを支援していきます。そしてオフィスや病院、物流、製造といったさまざまな現場の課題に対して、当社ならではの価値提供でお客様の価値創造を支援していきます。また「プロフェッショナルプリント事業」では、デジタル技術だからこそ実現する自動化・省人化に加え、印刷会社が付加価値ビジネスへ転換していくことを支援します。「ヘルスケア事業」では、X線や超音波などの画像診断とその診断支援のための医療ITサービスに加え、遺伝子診断と創薬支援を一体的に推進することで、疾病の予防、早期発見、早期診断、新薬開発支援という価値を提供していきます。産業用材料・機器事業については、「インダストリー事業」と呼称を変更するとともに計測機器や材料・コンポーネントに加えて、画像IoT技術を活かした状態監視ソリューションなどの事業を展開し、さまざまな産業のモノづくりの現場に安全・安心といった価値を提供していきます。
中期経営戦略「DX2022」の位置づけ
DXによりビジネスモデルを進化させ、安定収益と競争優位を築きます。
上記の事業戦略推進にあたって基盤となるのが、独自の「画像IoTプラットフォーム」です。当社の強みであるイメージング技術にAIやIoTの技術を組み合わせることで、現場から継続的に取得する画像などのデータを活用して、付加価値の高い、高収益ビジネスを創出していきます。
当社が生み出していくプロダクトやデバイスは、すべてネットワークとつながるプロダクトであり、さらには、現場で働く人々が、自分たちの業務改革やワークフロー改善につながる、さまざまなソフトウェアにもアクセスできる、そういう製品群となります。つまり、「Smart Connected Product」です。
こうしたビジネスを推進するために「画像IoT人財」の獲得・育成を、中期的視点で引き続き進めていきます。「DX2022」の3年間で現状の500人規模をさらに1,000人規模に倍増させる計画です。このほかカナダに研究開発拠点を設置し、大学とAI先端技術の共同研究を開始しました。また国内でも画像IoTの新たな開発拠点として、2020年8月に高槻サイト(大阪府)に新開発棟を竣工しました。
選択と集中を加速させ、持続可能な領域を強化していきます。
事業ポートフォリオマネジメントを一層強化すべく、事業の「選択と集中」もさらに進めていきます。その判断基準は大きく3つあります。
一つは「事業の魅力度」です。将来にわたる成長性、新たな「柱」となれるだけの事業規模、次の投資を可能にする高収益性などが、その条件となります。
2つ目が「継続的に勝てるか」。当社の無形資産と既存事業の強みをベースに、DXに向けて当社に足りない能力を有機的に取り込んで、お客様業務にとって不可欠の価値を提供する。そうすることで、お客様との関係を競争相手が入り込めないレベルにまで強固なものとしていきます。
そして3つ目が「自社戦略との適合性」です。コニカミノルタが目指す環境・社会価値を提供できる事業に注力していきます。現場で働くさまざまな「プロフェッショナル」の方々に「コニカミノルタをパートナーとして選びたい」と思ってもらえる事業領域にフォーカスしていきたいと思います。
本来であれば、中期経営戦略の策定とあわせて計数面での計画も発表しますが、現在は、コロナ禍によって世界経済の動向、当社の事業環境が極めて不確実な状況にあります。そのため、現時点では「DX2022」の計数面での計画を設定せず、今後、時期を改めて発表する予定です。
変革への想い 「イメージング」の強みにこだわって、製造業として新たな未来を切り開いていきます。
私の問題意識の根底には、日本の製造業の未来に対する強い危機感があります。日本の製造業が、“Japan as No.1”などといわれた30年以上前の成功体験から未だ脱却できていないとしたら、非常に危険だと思っています。GAFAに代表されるプラットフォーマーが世界を席巻する一方で、中国を筆頭とする成長国勢が猛スピードでかつての日本の成功モデルを踏襲し成長している現状において、新たなゲームチェンジを可能にする高付加価値型ビジネスに進化していかねば、日本の製造業の未来は厳しいと思います。
当社は巨大なグローバルIT企業にはない高度なテクノロジーを保有しています。特にイメージングの領域における画像処理や解析などの技術力には間違いなく高い優位性があります。この卓越したテクノロジーの力を、本当の「バリュー」に昇華させること、それこそが、経営トップとして課せられた使命であると私は考えています。
バリューとは、顧客価値です。顧客価値はつねに「現場」にあります。そして「現場」とは、そこで働く人々の営みにほかなりません。そうした人々の求めている生きがいや創造性を突き詰めることなしには、本当の意味での顧客価値は生まれません。「現場」との豊富な接点を持つ当社の勝機はまさにそこにあると考えています。
「イメージング」の技術、すなわち「見えないものをみえる化」する技術は、人間のさまざまな創造やコミュニケーションに必須であり、そのニーズが消滅することはあり得ません。150年近くにわたる歴史のなかで、コニカミノルタもずっとそこにこだわり続けてきました。何のために、誰のためにその技術を活かすのか。どのような顧客価値を創造していくのか。そこさえ間違えなければ、コニカミノルタはこれからもずっと成長していける。私はそう信じています。