がんやアルツハイマーの領域において推進している、コニカミノルタのバイオヘルスケア事業。
グループの力で、個々の身体に最適な投薬・治療の実現や創薬の効率化支援により、
社会保障費の抑制に貢献します。
米国本部主導の事業推進体制で、個別化医療のグローバルリーダーに
近年、がん治療において、重大な副作用や膨大な医療費、創薬にかかる時間・コストが大きな課題になっています。そこでコニカミノルタは、患者様個々人の遺伝子変異などの病因に応じて最適な創薬、投薬・治療を行うプレシジョン・メディシン(個別化医療)の分野に注力しています。
コニカミノルタ、米国のAmbry Genetics(AG社)、Invicro社というグループ3社が保有するタンパク質精密定量化技術や遺伝子診断技術、画像解析技術を駆使することで、人体の分子レベルでの診断や疾病・薬効の解析を可能にします。これにより、患者様への適切な投薬・治療を支援し奏功率を上げるともに、製薬会社にはバイオマーカーの特定や治験の効率化による創薬成功率向上を支援するサービスを提供します。
2018年には、個別化医療の先進国である米国に、3社を統括する新会社、Konica Minolta Precision Medicine, Inc. (KMPM)を設立。複数の医療系企業で要職を務めてきた Kenneth Bloom氏をCMOに迎え、米国本部主導で事業を推進する体制を構築しています。
また、諮問機関としてサイエンティフィック・アドバイザリーボードも設置しました。米国がん学会の元会長John E. Niederhuber氏をはじめ多様なKOL(Key Opinion Leader)を招聘しています。KOLは、新薬開発や新しい医療サービスの立ち上げ時に大きな影響力を持つ存在であり、米国の医療業界では非常に重視されています。
2019年2月には米国で初のミーティングを開催し、アドバイザリーボードのメンバーとKMPM、AG社、Invicro社のほか、日本からもゲノムサイエンスの権威2名がゲストとして参加しました。グループの技術や画像診断データをいかに統合し事業として発展させるかなど、今後の戦略について活発に意見が交わされました。
アドバイザリーボードメンバーからは、グループで遺伝子診断と画像解析技術を併せ持つことの市場優位性や、がん細胞に発現する特定のタンパク質の数や位置まで正確に解析できる技術「HSTT」の独自性に大きな期待が寄せられています。
さらに2018年には、日本での事業体制を強化するため、コニカミノルタプレシジョンメディシンジャパン(KMPMJ)を設立しました。今後、日米の強力な事業体制のもと、病院市場向けと製薬市場向けのサービスを拡大し、個別化医療のグローバルリーダーを目指します。
CMO
Kenneth Bloom, M.D.
Chief Medical Officer
Konica Minolta Precision Medicine, Inc.
プレシジョン・メディシンの発展は、疾患の診断・分類方法に劇的な変化をもたらします。がんなどの疾患の複雑性の解明が進むにつれ、個別化医療による治療効果の最大化や副作用の緩和を実現できるようになりました。一方で、こうした技術の本格普及には、診断画像から患者の遺伝的特徴までのデータを統合した新たな診断手法が必要とされます。これこそが、私がコニカミノルタのプレシジョン・メディシンに魅力を感じている理由です。
プレシジョン・メディシンの目指すところは、これまでは個々に行っていた複数の診断検査を統合して包括的な解析を可能にし、医師による精密な診断を実現することです。これにより、私たちは診断業界を変革していきます。
Profile
GE Healthcare社のChief Medical Officerや、Human Longevity社のがん関連部門のトップを歴任。病理ラボの立ち上げ含めて30年以上の業界経験を有する。
Advisory Board Chairman
John E. Niederhuber, M.D.
Adjunct Professor Oncology and Surgery
The Johns Hopkins University School of Medicine Baltimore, MD
コニカミノルタのプレシジョン・メディシン本部のトップの方々と初めてお会いした際、そのビジョンおよび人財の質の高さに感心しました。コニカミノルタがAG社とInvicro社を買収したことは、プレシジョン・メディシンに本気で取り組もうという意思の表れだと思います。AG社は、遺伝子診断分野で高度な技術を持つ優良企業で、遺伝性疾患に関する莫大なデータベースを所有しています。またInvicro社は、高度なデータ解析技術と科学的専門知識を持つ有能な経営陣を擁し、イメージング分野で異彩を放つ企業です。両社のCEOによる情熱的な説明やビジョンは、本事業の今後のさらなる発展を予感させました。これらを知ったうえで、ゲノミクスや医療の未来に関する私自身のビジョンとの相性を踏まえ、アドバイザリーボードの議長という名誉ある職務を引き受けさせていただきました。コニカミノルタによるプレシジョン・メディシンへの新たな取り組みは、患者治療の将来に多大な利益をもたらすものであり、その取り組みに当初から関与できることは私にとって大変貴重なことであると感じています。
Profile
Inova Translational Medicine Institute社CEOで、米国がん学会の最高権威。ブッシュ元大統領により指名され、米国がん学会の会長を務めた経験を有する。
AG社とコニカミノルタが連携し、
遺伝子診断サービスを新規市場向けに拡大
遺伝子診断市場は、米国を中心に世界で15%の伸長率が見込まれています。そのニーズを取り込むため、AG社の技術・サービスをもとに2つの施策を強化していきます。
1つ目は、遺伝子診断の精度向上です。AG社は以前から、がんの疑いがある人やがん罹患者を対象にしたDNA検査サービスを提供しており、その精度は業界トップクラスと評価されています。2019年からは新たにRNA※検査もスタートし、DNAとRNAの検査を重ねて行うことで、その精度を飛躍的に向上させます。
2つ目は、遺伝子診断の対象者を、がんの非罹患者まで拡大することです。その一環として定期健診の受診者向け遺伝子診断サービス「CAREプログラム」を開始しました。注力領域は、乳がんです。乳がんは遺伝学的リスクが高いため、定期健診時に遺伝子診断を行うことで、早期発見や予防に大きく貢献できます。
非罹患者対象の遺伝子診断は、他社もリーチしていない新規市場であり、「CAREプログラム」のターゲットは罹患者数の約10倍に及びます。コニカミノルタは長年、定期健診などに使われるX線撮影装置やマンモグラフィーを多くのイメージングセンター(画像診断施設)に提供しており、この販路を活用することで、乳がんの定期健診とともに遺伝子診断の普及を目指します。
また、遺伝子診断においては、検査の精度はもちろん、検査結果のフィードバックの品質も大切な要素です。AG社は100人以上の遺伝子カウンセラーを有し、そのカウンセリング力は米国で圧倒的な強さを誇ります。この強みを活かして、遺伝子カウンセラーがいないイメージングセンターにも、遺伝子情報に関する啓発を含めた正しい情報提供、リスク保有がわかった場合の丁寧なカウンセリングを行っていきます。
日本でも、LSIメディエンス社と提携して遺伝子診断サービスの展開を開始し、医療保険の適用を受けるための申請プロセスも進めています。また、東京大学と国立がん研究センター研究所と共同で次世代包括的がん遺伝子パネル検査に関する共同研究開発を開始することに合意するなど、産学連携強化も図っています。
※RNA:タンパク質がつくられる際に働くリボ核酸。遺伝情報の一時的な処理を行う。
Invicro社と連携し、製薬市場向けにHSTT技術を活かしたサービスを展開
製薬市場向けには、コニカミノルタが保有するHSTT技術を活用した創薬支援サービス(Quanticell)を強化していきます。このサービスは、製薬会社からがん細胞の検体を預かり、ラボで解析した結果をフィードバックするものです。日本だけでなく米国でも展開していくため、2018年4月、Invicro社内に専用のラボを新設しました。米国内の製薬会社など140社に創薬支援サービスを提供するInvicro社の販路を活用してQuanticell (HSTT)の価値を訴求していきます。
将来的には、製薬会社向けのデータビジネスも視野に入れています。遺伝子診断などで得た分子情報をデータベース化すれば、遺伝子変異の要因解明の手がかりなどになり、創薬の効率化に役立ちます。さらには、病院の電子カルテとも連動することで、個別化医療の質、ひいては患者様のQOLを一層高めることができます。
グループの技術とノウハウで病院市場と製薬市場のニーズを確実に捉え、バイオヘルスケア事業を、コニカミノルタの将来の収益の柱に育てていきます。
日本は米国に比べ、遺伝子診断を含めた個別化医療がまだあまり普及していません。そうしたなか、私が製薬業界からKMPMJに転身したのは、コニカミノルタに大きな可能性を感じたからです。HSTTなどの技術はもちろん、個別化医療の先進国・米国に拠点があることや、AG社の100万件以上の遺伝子診断実績といったグループ資産も魅力でした。
現在KMPMJは、グループ会社と協力しながら、国内の製薬会社や研究・医療機関に積極的にアプローチしており、我々の技術は多くの研究者の関心を集めています。
目下の注力分野は製薬会社向けビジネスです。今後、独自の技術をバイオマーカー化することで、創薬にかかる膨大なコスト・時間の低減や、成功率の向上という課題解決に貢献していきます。同時に、遺伝子診断の保険適用や、患者様に適切な情報を提供する遺伝子カウンセラーの整備など、個別化医療の普及に向けた環境づくりも進めていきます。
患者様の予後を改善し、医療費を軽減するには、早期介入が最大の特効薬です。我々の技術で早期診断・治療を支え、日本の個別化医療をリードしていきます。
Profile
第一製薬の研究開発職、グラクソ・スミスクラインの日本のコマーシャル部門のトップ、アストラ ゼネカのオンコロジービジネス日本代表などを経て、2018年、現職に就任。