デザイナーズインタビュー

目指したのは “優しいデザインの医療機器”

中田 敦

Atsushi Nakada

  • 芸術工学部デザイン学科卒
  • 2013年にキャリア採用で入社

超音波画像診断装置 SONIMAGE HS1

超音波診断装置とは、身体に当てたプローブから超音波を発生させ、反射した超音波を受信し画像化する機器。受診者の負担が少なく、リアルタイムに画像診断が可能なため、内科・産婦人科・整形外科など幅広い臨床領域で使用されています。SONIMAGE (ソニマージュ) HS1は、ハンドキャリー型ながら高い分解能を実現、診療施設内移動や在宅、屋外まで診断環境を拡げています。

新鮮で正確な情報が医療機器デザインの要

私は、医療機器の操作画面のGUI(Graphical User Interface)デザインを主に担当しているのですが、医療機器のデザインには、新鮮で正確な情報がとても大切なんです。
例えば、アイコンを1つ描く場合でも、どのような患者さんの、どのような疾患に対しての機能なのかを正しく理解する必要があります。利用状況も様々で、明るい診察室や病棟で使用される場合もあれば、暗い検査室で使用される場合もあります。また、患者さんが画面を目にしたり、直接触れたりすることもあります。

こうした情報は、詳しく勉強しているエンジニアに聞いたり、専門文献を読むのですが、やはり、病院に出向いて医師や技師にお話をお聞き、医療機器の使用現場を見せていただくことが重要です。その際には専門用語がバンバン出てくるのですが。それを1つ1つ聞くわけにはいかないので、いつも事前に調べてから打ち合わせに臨んでいます。こうしたことも、デザインをする上で必要なことだと思います。

医師にも患者さんにも “優しい機器”を目指して

開発当初のSONIMAGE HS1はもっと明るく鮮やかな画面でした。ところが実際に使われる方にチェックしていただいたところ、「眩しくて疲れる」という意見をいただきました。そのため色の彩度を下げ、明度は使う方が任意に調整できるようにしました。私は使用環境について理解していたつもりでしたが、認識が甘かったということです。このような難しさ、面白さがありますね。

SONIMAGE HS1には多くの機能が盛り込まれていますが、タッチパネルの操作画面を採用したことにより、必要な機能だけを出したり、普段はあまり使わない機能を隠したりすることができます。このように「選択肢が減る = 操作を迷わせない」ことで、医師・技師にとって快適な診療と、患者さんにとっての負担軽減を意識してデザインしました。

他にも、患者さんも目にする可能性を考慮して、親しみやすい画面にすることも心がけました。例えば、胎児を示すアイコンって、黒背景の画面だと怖い印象になりがちなんです。だから妊婦さんが見たときに不安感を与えないように、少し表情のある胎児のアイコンにする――こういった配慮も機器に必要な“優しさ”であり、注意したところですね。

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心がけるのは、日々の勉強とオン・オフの切り替え

とにかく勉強しなければならないことが多いですし、難解で大変ですが、調べているうちにだんだん興味が出て、今では自分なりのこだわりを持ってデザインをするようになりました。
ストレス解消法は、休日に子どもと一緒に思いっきり遊ぶこと。自分の中に「家では仕事をしない」というルールがあって、そのルールをきちんと守るようにしているから、オンとオフのスイッチは切り替えしやすいですね。家に帰ったら自然にオフに切り替えられます。ただ1つだけ例外があって、風呂に入っているときにアイデアが浮かぶことがよくあるんですよ。だから、風呂には防水のスマートフォンを持って入って、アイデアが浮かんだらすぐに書き留められるようにしています。