ICT活用による介護現場と教育の変化

東京YMCA医療福祉専門学校にて、公開講座を実施

2019年2月21日(木)、東京YMCA医療福祉専門学校主催による公開講座「介護現場でのICTの活用事例とこれから」にて、コニカミノルタはケアサポートソリューションのデモンストレーションと、「介護イノベーションによりもたらされる新しい介護の世界」をご紹介させていただきました。当日は、専門学校生をはじめとした70名以上の方がご参加くださり、盛況の内に終了しました。

今回は公開講座を主催されました東京YMCA医療福祉専門学校 八尾相談役に、
介護現場におけるICT活用へのお考えと今後の介護業界の展望について、お話を伺いました。

ICTの活用は介護スタッフの負担を減らし、良い循環を生み出す

―ICT(情報通信技術)の活用公開講座開催を経て、先生の考えに変化はありましたか

当初、介護現場のICT活用については、職員の負担軽減になるものと、ぼんやりと思っていました。例えば、日々の申し送りがスマートフォンなどで常時情報共有され、引継ぎの時間が短縮出来ることなどが職員のメリットとなるのではないかと考えておりました。
しかし、公開講座を通じ、ICTの導入により情報共有が進むだけでなく、入居者の介護に充てられる時間が倍近くになるという事実を知り、入居者にとってこんなにいいことはないと思いました。またブラックボックス化していた居室の中も、行動検知を活用して映像エビデンスも併せて家族に提示できることになる。これによって、家族と施設の信頼関係が強固になり、スタッフは入居者へより質の高いケアを提供するという良いサイクルを生み出すことが出来るようになる。

ICTを活用することで、誰か一人が楽になるというよりは、みんなが幸せになれる。そうした好循環のきっかけとして良いものだと感じました。

―介護の現場にICT化が広まることは、海外からの介護スタッフとの意思疎通の面でも期待されています

今後、ICT機器が各国の言葉に対応できるようになれば、ベトナムやインドネシアから日本にやってきたスタッフ達も、もっと仕事がしやすくなるでしょうし、日本式介護とともに、ノウハウごと海外に輸出することも可能になるのではないでしょうか。

今後、ICTを活用した介護が広がり、学習プログラムにも変化が表れてくる

―ICT化が介護現場に少しずつ普及していく中で、卒業生を現場に送り出す学校側としてどのような展望をお持ちでしょうか

おそらく今の卒業生たちは、遠からずICTのシステムを使った介護事業所の中で働くことになると感じている一方、多くの施設ではまだまだ導入されていないのが現状です。そのため、コニカミノルタさんと協力して先日実施した ような公開講座という形で介護のICT活用を世に示していこうと考えています。また 、学校教育の場では、時代の半歩先を行くタイミングで 介護のICT活用を学習カリキュラムとして授業に取り入れ、卒業後すぐに現場で対応できるように学生を育成していきたいと思っています。

―介護の学習内容にもICT活用の変化は起きるのでしょうか

新カリキュラムでは、介護のICT活用は「福祉機器」というくくりの中で扱っています。しかし、従来からある車いすや杖、介護ベッドなどと一緒に扱われており、福祉機器の一部という扱いでしかありません。情報もまだまだ少なく、教える側の力も不足しているのが現状です。しかし、2023~26年あたりで検討される次のカリキュラムには「福祉機器」の中に 介護ロボットやAIを使ったICT介護も一つの学習ジャンルとして確立されているだろうと予測しています。

介護業界の人材不足における今、学校として目指すこと

―介護現場が人不足に悩まされる中、学校の数も減ってきているということを耳にします

介護福祉学科を有する学校が減ってきているのは事実です。なかなか学生が集まらず、介護福祉学科の募集を止めてしまう学校も増えてきました。
しかし実際に高齢者をかかえる介護施設では、そうはいきません。人手不足を理由に介護福祉士抜きで施設を運営することはできないのです。ですから私たち東京YMCA医療福祉専門学校もこの問題を真正面から受け止め、各施設との相互協力でさまざまな試みを行っているところです。

介護人材の不足を解消するためにも、行政も巻き込みながら施設の方と学校で相互に協力していけたらと考えています。


東京YMCA医療福祉専門学校 相談役八尾 勝(ヤオ マサル)氏

東京YMCA医療福祉専門学校校長を経て、現在は同校相談役。ほかにも日本介護福祉士養成施設協会の東京部会議長を10年以上歴任。公益社団法人東京都介護福祉士会では設立当初から理事メンバーに加わり、公益財団法人東京都福祉保健財団 外国人介護従事者受入環境整備検討委員も担当するなど介護・福祉業界の発展のために日々尽力している。