ニュースリリース
バイオものづくりにおける高生産株検出システムが
日本農芸化学会2025年度大会で「トピックス賞」を受賞ハイパースペクトルイメージングと異常検知モデルを活用
2025年4月23日
コニカミノルタ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大幸 利充、以下 コニカミノルタ)の研究員が、「日本農芸化学会2025年度大会」(主催:公益社団法人日本農芸化学会 会期:2025年3月4日~8日)でバイオものづくりにおける高生産株検出システムについて発表し、一般演題1,786件の中から30件に授与されるトピックス賞を受賞しました。
トピックス賞は、日本農芸化学会で初めて公表する、学術的あるいは社会的にインパクトのある内容を含む発表に授与されるものです。
今回、コニカミノルタの研究員が発表した「ハイパースペクトルイメージングと異常検知モデルを利用した高生産株検出システム」は、社会的インパクト、農芸化学らしさ、科学的レベルの観点で高く評価されました。
なおこの発表は、2023年にコニカミノルタと国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下 産総研)が共同で設立した、コニカミノルタ-産総研 バイオプロセス技術連携研究ラボ(以下 バイオプロセス研究ラボ)において取り組んだ共同研究の成果です。
【代表受賞者】
コニカミノルタ株式会社
技術開発本部 研究戦略センター 渡 優有
コメント:
このたびは、このような輝かしい賞を頂戴することができ、大変うれしく思います。今回の受賞は、バイオプロセス研究ラボの関係者皆様の多大なるご尽力の賜物です。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。この受賞を励みに、今後もコニカミノルタが培ってきたコア技術と産総研が誇る総合力を融合してサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

【研究題目】
ハイパースペクトルイメージングと異常検知モデルを利用した高生産株検出システム
【研究背景および内容】
微生物などの生物の能力を活用して有用物質を作り出す「バイオものづくり」は、化石燃料を原料とせずに物質の生産を行えることから、カーボンニュートラル実現のキーテクノロジーとして大きな期待が寄せられています。
微生物による物質生産を実用化するためには、目的の物質を効率よく生産する能力を有する、微生物(高生産株)を開発する技術が重要だと考えられています。近年の遺伝子工学の発展により、大規模かつ包括的な組換え株の作製技術が確立された一方、その組換え株から物質生産能力が高い微生物を効率的に検出する技術は発展途上にあります。
本研究では、ハイパースペクトルイメージング(HSI)*1と異常検知モデル*2を組み合わせることで、生分解性プラスチックの一種であるポリヒドロキシ酪酸(PHB)を効率的に生産する大腸菌を、93%の精度で検出できるシステムの開発に成功しました。

これまでにも、HSIと機械学習を組み合わせた微生物検出システムは報告されていますが、分類モデルや回帰モデルを適用しているため、学習データとして組換え株を事前に準備する必要がありました。本手法では、HSIで微生物の色や形状、艶などの視覚的な情報を数値化したうえで、元の微生物株(ホスト株)を正常として学習させて構築した異常検知モデルを適用することで、高生産株を異常として検出することが可能になりました。
これにより、コロニー*3を撮影するだけで高生産株を恣意性なく自動的に検出できるようになり、組換え株の生産能力を網羅的に評価する必要がなくなるため、高生産株開発の効率化に大きく貢献することができます。また、ロボティクス技術との組み合わせによって、より高度な自律駆動型抽出システムの実現が可能となることも期待できます。
【バイオプロセス研究ラボについて】
コニカミノルタ、産総研グループがバイオプロセスにおけるスケールアップや安定性に関わる生産エンジニアリング課題の解決、また微生物による高機能材料製造を志向した次世代バイオ生産マネジメントシステムの実現を目指して、2023年6月に設立した研究ラボです。
バイオプロセス研究ラボでは、コニカミノルタが培ってきたセンシング技術、AI技術とこれらを組み合わせた画像IoT技術をさらに進化させ、産総研の総合力を投入して融合させることで、従来にない複雑系物質生産におけるモニタリング技術を開発し、バイオものづくり実用化への課題解決に向けて取り組んでいます。
コニカミノルタは、これからもバイオものづくり実用化への課題解決を通して、カーボンニュートラルをはじめとするサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
*1 コニカミノルタが開発および販売しているハイパースペクトルカメラを用いて、様々な材料を識別し、それらの特性を定義するための非破壊の計測方法
*2 機械学習を活用して蓄積された大多数のデータと比べて振る舞いが異なるデータを検出するための技術
*3 1個または少数の微生物(主に細菌や真菌など)が、固体培地(寒天培地など)上で増殖して肉眼で確認できるようになった細胞の塊のこと
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