ニュースリリース

蛍光ナノ粒子を用いた間接蛍光抗体法に関する国際標準発行のお知らせ
JMACとコニカミノルタが共同提案、日本発先端技術の普及を促進

2023年5月8日
特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム
コニカミノルタ株式会社

特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム(所在地:東京都千代田区、会長:信正 均、以下 JMAC)が中心となり、コニカミノルタ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大幸 利充、以下 コニカミノルタ)と共同で提案してまいりました、免疫組織化学における蛍光性ナノ粒子を用いた生体分子の定量化のための性能評価要件に関わる国際規格が、ISOの「ナノテクノロジー」専門委員会(ISO/TC 229)において検討され、このたびISO/TS 23366「Nanotechnologies — Performance evaluation requirements for quantifying biomolecules using fluorescent nanoparticles in immunohistochemistry」として発行されましたことをお知らせいたします。

間接蛍光抗体法は、特定の生体分子を認識する一次抗体と、その一次抗体を認識する二次抗体を用いて、培養細胞や、薄切下組織標本を染色して、特定の生体分子の局在や量を測定する方法です。二次抗体に蛍光物質を結合させる方法や、二次抗体にまずビオチンという低分子物質を結合させ、ビオチンと強い親和性を持つストレプトアビジンという蛋白質に蛍光物質を結合させてさらに反応させる手法などが知られています。ヒトの試料を染色する場合には、臨床検査にも使われており、また創薬におけるハイコンテントスクリーニングにも応用されるなど市場が拡大しております。

従来、間接蛍光抗体法で特定の生体分子の場所や量を可視化するために使われてきた蛍光色素に比べ、ナノ粒子は、明るい蛍光を発し、また褪色も非常に遅いため、蛍光像の撮影だけではなく、定量などの分析にも適しています。特に、銀塩写真用粒子の開発で培った技術により、コニカミノルタが開発した蛍光ナノ粒子PID(Phosphor Integrated Dots)は、均一なナノレベルの粒子径を有し、従来の蛍光色素よりも高い輝度や低褪色性により、従来法では達成できない高感度な定量的解析が可能になることから、Quanticell®サービスとして、コニカミノルタが事業展開しています。さらに、高輝度であるため、粒子からの輝点の数を計数することができ、輝点数と局在する生体分子の量が相関することを示すデータも得られていることから、新たな定量方法も提案しており徐々に普及してきております。

経済産業省の支援*4のもと、JMACとコニカミノルタが共同で開発をリードし、今回発行された本規格は、二次抗体、もしくはビオチンを介して二次抗体と結合するストレプトアビジンなどの標識に、蛍光ナノ粒子を用いる間接蛍光抗体法を適用範囲とし、ナノ粒子を用いた間接蛍光抗体法の原理やナノ粒子の選択、定量システムなどの基本要件が定められている他、データの比較可能性や性能評価手法、異なったシステムにより解析したデータの相互比較をするための共通の参照物質、さらには検証や妥当性評価、報告に関する要求事項がまとめられています。定量システムの要件には、輝点数による定量方法も採用されているため、コニカミノルタが開発したPID関連技術を包含する国際標準となっております。

今回発行された本規格は、コニカミノルタが開発したPIDを含めた、染色試薬・蛋白質定量キットなどの製品性能に関し、粒子の大きさ・検出感度・定量の妥当性検証の指針等といった性能評価指標の標準化を実現しました。これにより、PIDを含む蛍光ナノ粒子を利用した免疫化学組織染色法の、病理診断等の医療・診断分野へのさらなる普及が期待されます。医療・診断分野の国際標準化は、グローバルな視点で診断結果を共有化することにつながり、さらには、日本の医療産業の国際市場でのシェア拡大のための基盤構築、安全・安心な社会づくりに貢献できるものと期待されます。

*1 ISO
国際標準化機構(International Organization for Standardization)の呼称であり、スイスのジュネーヴに本部を置き、電気分野を除く工業分野の国際的な標準である国際規格を策定するための、民間の非政府組織。

*2  Quanticell(クォンティセル)
Quanticell®サービスが提供する高感度・定量解析には、コニカミノルタが独自に開発した高輝度蛍光粒子であるPIDを用います。PIDは均一な粒子径、蛍光色素や量子ドットよりも高い輝度、励起光照射下での高い安定性といった特徴を有しているため、従来法では達成できない高感度・定量的な解析を実現しています。免疫染色の手法としては、従来法と同様のプロセスであり、一次抗体、二次抗体、PIDの順に染色するため、特別な試薬や抗体は必要ありません。

*3 ISO/TC 229およびISO/TC 229/WG 5の邦文分科委員会、名称
ISO/TC 229「ナノテクノロジー」、WG 5「製品応用作業グループ」

*4 本規格は、経済産業省、戦略的国際標準化加速事業「蛍光ナノ粒子を用いた生体分子解析システムの評価に関する国際標準化」(2018-2020)の支援を受けて開発されました。

コニカミノルタ株式会社

1873年創業のコニカミノルタは、2023年に150周年を迎えました。祖業の写真フィルム、カメラで目に見える世界をありのままに写すことから、病気の予兆やモノづくりにおける品質のばらつきなど、人間の目に見えないものの見える化まで、当社は人々の「みたい」に応えながら、社会に新しい価値を創造してきました。様々な業種・業態の現場での働き方やモノづくりの変化など、事業環境の動向を先読みし、お客様や社会の課題解決に貢献するために、イノベーションを創出し続ける企業です。コニカミノルタは、この150年の節目を新たなスタートと位置づけ、創業以来培ってきたイメージングの力を活かし、人々や社会の持続的成長に貢献していくために邁進します。

コニカミノルタは、デジタルワークプレイス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業、インダストリー事業を柱とし、世界150カ国に製品・サービスを提供するグローバル企業です。

特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム

「バイオ計測技術コンソーシアム(JMAC:Japan bio Measurement & Analysis Consortium)」は、マイクロアレイ等のバイオチップ関連の産業促進・市場創出を目的とし、「バイオチップコンソーシアム」として2007年10月19日に設立され、2008年10月には東京都の認可を受けて特定非営利活動法人となったバイオテクノロジー産業分野の業界団体です。前述のとおり、2013年にはバイオチップに関する国際標準ISO 16578の発行を達成いたしました。その後、バイオチップ以外にも広くバイオテクノロジー関連の産業化活動の推進を行っていくため、2018年10月に「バイオ計測技術コンソーシアム」と名称変更し、主に標準化活動を行っています。

バイオテクノロジー関連技術は飛躍的に発展を成し遂げ、今日では有用な研究ツールとして、大学等の研究機関や製薬・食品企業等の研究所にて広く利用されるに至っています。しかしながら、精度測定、サンプル前処理、データ解析・判定、試薬管理などの方法および手順の確立をはじめとする関連技術の標準化がなされていないため、研究利用よりもはるかに大きな市場規模が想定される産業利用が十分になされていません。

一方で、世界各国においてはバイオテクノロジー関連技術の標準化活動が活発に行われており、市場のグローバル化が進む昨今、我が国の産業界もこれらの影響を看過できなくなってきています。

我が国でも、産業界が中心となって、バイオテクノロジー関連技術の産業化に向けた標準化を検討し、欧州や米国をはじめとする国外団体との国際協調を図り、標準化を推進していくことで、バイオテクノロジー関連技術の市場を創生していけるものと期待しています。

また特許や推奨基準などの勉強会を開催するなど、バイオテクノロジー関連技術に関する参加企業が情報を持ち寄って交流し、産業化に向けた課題が導かれ解決されていくことが、バイオテクノロジー関連技術の産業化を促進していくと考えます。

以上の趣旨の下で、バイオテクノロジー関連技術の標準化を通じて、産業化促進、および市場創生を行うことを目的として、当コンソーシアムは設立・運営されています。

当コンソーシアムに関する詳細な情報は、https://www.jmac.or.jpをご覧ください。

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