ニュースリリース

九州大学大学院医学研究院による
デジタルX線動画撮影(DDR)に関する研究成果が
権威ある国際学術雑誌「Radiology」に掲載
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)診断のための胸部X線動画撮影

2022年11月9日

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大幸 利充、以下 コニカミノルタ)は、九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野の石神康生教授、山崎誘三助教、循環器内科学分野の阿部弘太郎講師らの研究グループがコニカミノルタのデジタルX線動画撮影(DDR:Dynamic Digital Radiography)を利用して造影剤を使用せず肺の血流動態を可視化する技術を開発し、その研究成果が放射線科領域では世界的に最も権威ある学術雑誌のひとつである「Radiology」に掲載されたことを発表します。なお、本研究グループにはコニカミノルタも参加しています。

【研究の背景】

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、肺動脈内に血栓が慢性的に形成され、肺血流が障害される国内患者約4,000人の希少疾患です。無治療では極めて予後不良ですが、カテーテル治療や外科的治療により予後が劇的に改善することから、早期診断することが極めて重要です。CTEPHをいち早く見つけ出すため、肺換気/血流シンチグラフィ*1による肺血流評価が推奨されていますが、高価な大型装置、被ばく検査時間の長さから検査数は制限されており、肺血流障害を早期に評価する簡便な医療機器の開発が医療現場で望まれています。

【研究の内容】

デジタルX線動画撮影による肺血流イメージングは、単純X線撮影と同様の装置を用い、わずか数秒の息止めで撮影でき、肺の血流分布を評価できます。被ばく量も国際原子力機関の定める胸部X線写真正面像+側面像の基準よりも少なく低侵襲に撮影が可能です。この度、九州大学大学院医学研究院とコニカミノルタの研究グループは、この肺血流イメージングにより、造影剤や放射性核種を用いることなく、肺血栓塞栓症を示唆する血流分布異常の検出と、動画像もしくは胸部単純X線写真内の異常所見を合わせて評価することで、肺血栓塞栓症の診断を行う胸部X線動態撮影システムを構築しました。 CTEPHの検出における有用性を、既存の肺高血圧症50例のデータを用いて、放射線科専門医の読影によって後ろ向きに検証したところ、感度97%、特異度86%、診断精度92%と高い診断能を呈し、CTEPHスクリーニング*2のためのfirst choiceとして位置付けられている肺換気・血流シンチグラフィ*1とほぼ同等の診断結果が得られることが確認されました。
胸部X線動態撮影システムが、造影剤や放射性核種を使用せず、簡便に使用でき、より低被曝なCTEPHの新たな診断手法となる可能性を世界で初めて証明しました。

今後、胸部X線動態撮影システムの感度・特異度を評価する多施設共同での治験を行い、その有用性がさらに明らかになれば、CTEPHの早期診断が可能となり、早期治療につながることが期待されます。また、早急な検査・診断を要する急性肺血栓塞栓症の患者、造影剤の使用が困難なアレルギー患者や妊婦などに有効な新たな診断手法となる期待がもたれます。

【 デジタルX線動画撮影(DDR)とは 】

DDRは、パルスX線の連続照射で撮影したX線画像の連続表示により動画像を作成する技術です。DDRにより得られた動画像に、視認性向上や生体構造物の動きの定量化を目的とした画像処理を加えることで、従来の静止画では得ることが難しいより多くの情報をX線検査の段階で提供できます。
また、DDRはCTなどに比べて低線量で撮影することができ、初期の段階の検査における診断精度向上とともに、病変の早期発見と患者の負担軽減に寄与できると考えています。

【 掲載の概要 】

学術誌名Radiology
学術誌発行元Radiological Society of North America (RSNA、北米放射線学会)
論文名Efficacy of Dynamic Chest Radiography for Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension
(肺高血圧症患者における慢性肺塞栓症の診断検査としての胸部X線動態撮影の有効性)
主な執筆者九州大学大学院医学研究院
臨床放射線科学分野 教授 石神 康生
臨床放射線科学分野 助教 山崎 誘三
循環器内科学分野  講師 阿部 弘太郎
コニカミノルタ株式会社
ヘルスケア事業本部開発企画部臨床開発グループリーダー 福元 剛智
掲載日2022年11月8日(オンライン公開日)
DOIhttps://doi.org/10.1148/radiol.220908


コニカミノルタは、胸部単純X線検査を動画にすることにより、診断レベルを向上させることができると考えており、今後も一般X線撮影における新たな動画像診断の確立を目指して、取り組みを進めます。


*1:シンチグラフィとは、注射などで体内に放射性薬剤を投与して、臓器内に分布した薬剤から放出される放射線を大掛かりな装置で検出し、その分布を画像化したもの。

*2:引用元文献1) Frost A, Badesch D, Gibbs JSR, et al. Diagnosis of pulmonary hypertension. Eur Respir J 2019; 53: 1801904 [https://doi.org/10.1183/13993003.01904-2018].
2) 「慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)診療ガイドライン2022」日本肺高血圧・肺循環学会編 [http://jpcphs.org/pdf/guideline/cteph_guideline2022.pdf]

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