ニュースリリース
コア技術とインフォマティクスの融合で2021年度「化学技術賞」受賞
材料科学と情報科学の最新手法を組み合わせた革新的な材料開発手法
2022年5月30日
コニカミノルタ株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大幸 利充、以下 コニカミノルタ)は、「次世代Quanticell®用蛍光微粒子の開発 ~データ駆動による開発革新~」に対して、一般社団法人近畿化学協会(会長:杉山 弘、以下 近畿化学協会)が主催する、2021年度「化学技術賞」を受賞いたしました。 表彰は、5月27日(金)に大阪市内にて行われました。
近畿化学協会の「化学技術賞」は、化学に関連する研究及び技術で顕著な業績があると認められたものに対して贈られる歴史ある賞で、化学領域において高い権威があります。今回の受賞により、コニカミノルタのマテリアルズ・インフォマティクスへの取り組みが価値の高い技術であると認められたと考えています。
【受賞者とその業績】
コニカミノルタ株式会社 技術開発本部
先進コア技術センター 一杉俊平
データサイエンスセンター 田畑顕一、多喜川真人、池田祐子、服部達哉
「次世代Quanticell®用蛍光微粒子の開発 ~データ駆動による開発革新~」
【業績の内容】
コニカミノルタでは、医療・ライフサイエンス分野で注目されている生体分子の標識材料として、従来の蛍光色素より輝度と褪色性に優れた「高輝度蛍光ナノ粒子PID(Phosphor Integrated Dots)」を開発し、従来技術では困難であった標的タンパクの高感度検出を実現した超高感度組織染色サービス「Quanticell®」を提供しています。
次世代PIDでは、特異性向上のために小粒径化を図りながら、発光する明るさ(輝度)は保たれることが必要で、これに対して、新たな濃度消光抑制色素の開発(色素開発)と粒径・内包量制御粒子合成法の開発(粒子合成法開発)によって、従来の1/4の体積にもかかわらず同輝度を有する高輝度小粒径PIDの開発に成功しました。この開発では、データ駆動による開発法の革新により、従来型の開発では到達し得ない高特性を短期間で実現しています。
今回の開発を従来型で行った場合、始めに色素開発を行い、新色素が開発された後に粒子合成法開発を行うという手順が必要でしたが、データ駆動による開発では色素開発と粒子合成法開発が並行して進められるため、短期間に、しかも色素を粒子に仕上げた最終形でのベストマッチが選択できるという利点がありました。
また、色素開発においては、機械学習を用いることで対照実験を不要とした帰納的な分析から、課題解決のための複数の制御因子を突き止めました。さらに、粒子合成法開発においては数多く存在するパラメータから重要な制御因子を抽出し可視化することで、これまで半ば「経験と勘」に依存していた粒子合成処方最適化を非属人的なプロセスへと進化させ、人間の感覚では見逃されていた重要な因子を見出すことにも成功しました。
【技術の意義】
コニカミノルタでは、シミュレーション技術、センシング技術、AI技術(機械学習、ディープラーニングなど)や、これらを組み合わせた画像IoT技術を利用して、マテリアルズ・インフォマティクスおよびプロセス・インフォマティクスを進めています。これらの多岐にわたるインフォマティクス技術と材料科学(ケミカル)を適切に組み合わせることで、革新的な材料開発手法の確立を目指しています。
新開発PIDが既に次世代Quanticell®用部材として実装が進められている今回の成果は、バイオイメージングという精緻な設計を要する領域において、基幹部材をデータ駆動型開発によって合理的かつ迅速に開発可能であることを示した実例です。これは、かつてのフォト事業により化学反応を知りつくし、全社を挙げてDXを推進しているコニカミノルタであるがゆえに成し遂げることのできた、化学領域における開発革新を予見させる業績であると考えています。
【コニカミノルタのマテリアルズ・インフォマティクス実績】
2018年 | マテリアルズ・インフォマティクスを用いた高分子複合材料の弾性率の予測モデル構築 |
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2019年 | マテリアルズ・インフォマティクスと高速プロセスを用いた機能性酸化物ナノ粒子の高速合成法を構築1) |
2020年 | マテリアルズ・インフォマティクスと多検体合成法を用いた光機能性銀ナノ粒子の高速開発法を構築2) |
2021年 | 高分子複合材料のマテリアルズ・インフォマティクスにおける交互作用影響を評価する手法の構築 |
1),2) NEDO超先端材料超高速開発基盤プロジェクトに参画して得た実績
最新のAIやシミュレーション技術の導入、開発にも注力しており、国のプロジェクトへの参画など、外部研究機関とも積極的に連携しています。
コニカミノルタでは、従来のコア技術にインフォマティクスを融合することで、モノづくりのスマート化を進め、顧客価値の実現と社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。
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